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316 オーウェンの提案

 部屋に飛び込んできたオーウェンは、何事もなく部屋にいる僕とウィルを見て怪訝そうな顔をした。


「何か不測の事態が起こって呼び出したと思ったのですが、どうやら違うようですね」


 少し冷え込んだようなオーウェンの声色に僕はブルッと身震いをする。


 だが、ウィルはそんな事はお構いなしにオーウェンに手を振る。


「おはよう、オーウェン。エドがこの宿の解約をどうしたらいいかわからないって言うから呼んじゃった」


 悪びれもせず告げるウィルにオーウェンは顔を顰める。


「そんな事のために魔石を使ったのですか? …まぁ、ここをどうするかを伝えなかった私にも責任はありますが…」


 オーウェンはそのまま力無く椅子に腰掛ける。


 勢い込んで来たのに何事もなかったと知って力が抜けたようだ。


 オーウェンに促されて僕とウィルも椅子に腰掛けてオーウェンと向かい合った。


「エドアルド君は本当にこの宿を出て行くつもりなのですか?」


 確認するように問われて僕はこくりと頷いた。


「僕を狙っている人物がいつここを突き止めるかもわからないだろう? ここは王都にも近いし…。だったらもう少

し王都から離れた方がいいんじゃないかと思ったんだ」


 オーウェンはしばらく考え込んでいたが、何かを思いついたように顔を上げた。


「だったら私達のところに来ますか? このまま人間の世界にいるよりはエルフの国に来た方が落ち着けるでしょう」


 僕とウィルがエルフの国に?


 願ってもない提案だけど、お邪魔じゃないだろうか?


「僕としては嬉しいけれど、お邪魔じゃないかな?」


 恐る恐る尋ねるとオーウェンはニコッと笑顔を見せた。


「黒の女王はとても優しい方ですから、エドアルド君とウィルが来たからって怒ったりしませんよ」


 …なんかサラッと惚気られたような気がするんだけど…。


 とりあえずはオーウェンの提案に乗っかるとしよう。


「じゃあ、しばらくエルフの国にお邪魔しようかな」


「わかりました。それでは早速、ここの宿を解約しましょう」


 オーウェンは立ち上がって部屋を出て行きかけたが、扉の前で不意に振り返った。


「そう言えば、冒険者ギルドには立ち寄りましたか?」


「冒険者ギルド? ああ。昨日ゴブリンを仕留めたから冒険者ギルドに提出に行ったけど、それがどうかした?」


「エドアルド君を狙っている人物が嗅ぎつけないとも限りませんので、私が提出した事にしておきましょう。ちょっと行ってきますね」


 そう言ってオーウェンは部屋を出て行ったが、それほど待つ事もなく戻ってきた。


「終わりましたよ。それじゃエルフの国に行きましょうか」


 オーウェンは部屋の中の荷物をマジックバッグの中に仕舞うと、部屋の中に出来た裂け目の中に入って行く。


「早く! 行きますよ!」


 オーウェンに呼びかけられ、僕とウィルも裂け目の中へと入って行くのだった。



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