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315 ウィルの行動

 買い物を終えて宿屋に戻ると、早速部屋に備え付けてあるキッチンで肉を焼いてその上にタレをかけた。


 ジュウッという音と香ばしい匂いが鼻をくすぐり食欲をそそる。


 ウィルは僕の隣に立ってお肉が焼けるのを見ながら、今にもよだれを垂らさんばかりに目を輝かせている。


 焼き上がった肉を皿に盛り付ける時、ウィルの分をちょっと多めに盛ってやると、めちゃくちゃ嬉しそうな顔をした。


 それぞれ自分のお皿を持ってテーブルに運んでから夕食を摂る。


 ブリジットが教えてくれたタレはそれなりに美味しかったけれど、何かがちょっと物足りないように思うのは気の所為だろうか?


「美味しかったー! ごちそうさま!」


 ウィルは口の周りをペロリと舐め回すと、お皿をシンクに置いてそのままベッドに直行した。


「おやすみー」と、ベッドにダイブするとドラゴンの姿に戻り、そのままスヤスヤと寝息をたて始める。


 やれやれ、呑気なもんだな。


 食べ終えた食器をシンクに持っていき、フライパンやカトラリーと共に洗った。


 後片付けを終えてグルリと部屋の中を見回す。


 オーウェンが借りてくれた部屋だけれど、いつまでもここに滞在していていいんだろうか?


 ここは王都の隣の街だ。


 いつ僕を狙っている人物がここを嗅ぎつけないとも限らない。


 そうなる前にさっさとここを立ち去った方がいいんじゃないだろうか?


 僕はそう思いながら、ベッドに寝ているウィルに目をやった。


 ドラゴンに戻ったウィルは身体を丸めて静かな寝息を立てている。


 とりあえず、明日になってからウィルと話をすればいいか。


 僕は浴室に行って軽くシャワーを浴びると、ウィルの隣のベッドに潜り込んだ。





 翌朝、目を覚ますとウィルはまだ寝ていた。


『寝る子は育つ』って言うけれど、ちょっと寝過ぎじゃないか?


 ドラゴンがどこまで大きくなるのかは知らないけれど、このままじゃ話も出来ないから起きてもらおう。


「ウィル、朝だよ」


 ちょっとひんやりとするウィルの身体をユサユサと揺すると、「んー?」という声が返ってきた。


 寝ぼけ眼のまま、顔を上げたウィルはくわーっと大きな欠伸をすると、人間へと姿を変えた。


「おはよ、もう朝?」


「とっくに日は昇ってるよ。先に顔を洗っておいでよ」


「…ん」


 ベッドから降りたウィルは目を擦りながら顔を洗いに行く。


 バシャバシャと水音が聞こえた後、顔を拭きながらウィルが戻ってきた。


「ねぇ、ウィル。いつまでもここに留まっているわけにもいかないだろう? そろそろ別の街に行こうと思うんだけど、いいかな?」


「いいんじゃない? 僕はどこに行っても構わないよ」


 思ったとおりの答えがウィルから返ってくる。


 ウィルの事はともかく、この部屋は一体どうしたらいいんだろう?


「この部屋はオーウェンが借りてくれただろう? どうしたらいいかな?」


 ウィルは一瞬、キョトンとした顔を見せたが、すぐに「ああ」と声を上げると僕に近寄ってきた。


「そんなのオーウェンに聞けばすむ事じゃん」


 そう言うなり僕のポケットから魔石を取り出すと、それを握りしめて呼びかけた。


「オーウェン、来て!」


 突然のウィルの行動にあっけにとられていると、部屋の何もない空間が裂けてオーウェンが姿を現した。


「エドアルド君! 無事ですか!?」


 切羽詰まったようなオーウェンの顔を見て、僕は頭を抱えずにはいられなかった。



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