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310 好み

「しかしアリシア嬢は随分と肝が据わっていましたね。薬を飲まされたかもしれないというのに臆する事なく挨拶をして退出されるなんて…」


 ブライアンが立ち去っていく令嬢達の後ろ姿を見ながら感心したように述べる。


 だが、エドワード王子はそんなアリシアの声がほんの少し上ずっていた事に気づいていたがあえてブライアンには告げなかった。


「それにしてもエドワード王子があんな感じの女性が好みだとは初めて知りましたよ」


 ブライアンにしみじみと告げられてエドワード王子はちょっとムッとした顔になる。


 エドワード王子が選んだ令嬢達はどれも整った顔をした美人ばかりだった。


 家柄もだが、顔で選んだと言われても反論は出来ないほどの美人揃いだ。


「うるさいぞ。顔で選んだっていいじゃないか。だいたい政略結婚をしなければならないのなら、好みの顔の女性の方がいいに決まっているだろ。そう言うお前だってアンジェリカ王女に一目惚れだったじゃないか。それを言うならアンジェリカ王女もお前に一目惚れだったみたいだけどな」


 ブライアンはエドワード王子に痛いところを突かれ、ウッと口ごもる。


「わ、私の事は今は関係ないでしょうが! それよりもこの瓶の中身を鑑定してもらってきますね」


 そう言うとブライアンはそそくさとガゼボから出ていった。


 エドワード王子はそんなブライアンを見送りながら後ろを振り返った。


「もう出てきてもいいぞ」


 エドワード王子に声をかけられ、クリフトンとアーサーがガゼボの中に入って来た。


「やあ、お疲れ。君達の調査のおかげで大事に至らずに済んだよ。ありがとう」


 エドワード王子に頭を下げられ、アーサーはワタワタと手を振る。


「と、とんでもありません。僕はエドワード王子に言われたとおりに情報を集めただけで…」


 恐縮するアーサーに対してクリフトンは少しばかり厳しい目をエドワード王子に向けた。


「何もこの場で捕まえなくても良かったんじゃないですか? ご令嬢達にも怖い思いをさせなくても済んだのに。それにエドワード王子にも薬を盛られる可能性だってあったんですよ」


 きつい口調でクリフトンに詰め寄られ、エドワード王子は思わず苦笑いをする。


「まあまあ、落ち着いて。誰も飲まなかったんだからいいじゃないか。それにご令嬢達にはある程度現実を知ってもらわないといけなかったからね。王族の一員になるという事は華やかな場面ばかりではないからね。そんな時にどう

いう対応を見せるか知りたかったというのもあったしね」


 クリフトンはエドワード王子の言葉に「はぁ」とため息をついた。


「確かにそうかもしれませんけどね。だからといって自ら危険な目に飛び込むのは今後止めていただきたいですね」


「…善処する」


 エドワード王子はそう言いながらもクリフトンからそっと目を逸らすのだった。




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