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309 騒動

 三人の令嬢が一言ずつ語ったところで、脇に控えていた侍女がお茶を淹れにかかった。


 エドワード王子は次に話す事を考えながら、ぼんやりと侍女がお茶を淹れているのを見ていた。


 最初に自分の前にお茶が淹れられたカップが置かれた。


 その後、三人の令嬢の前に順番にカップを置いていくのだが、何となくその手が小刻みに震えているように見えた。


(何だ? 随分と震えているような…。もしかして緊張しているのか?)


 エドワード王子はそう思い、少しばかり頬を緩めた。


 だが、すぐに(待てよ)と自分の考えを否定した。


(王宮に勤める侍女の中で王族に直接関わる立場につくのは、下級貴族の出身の者だ。そこまで緊張するはずがない)


 エドワード王子が訝しんだその瞬間、


「お前! 何をしている!」


 そんな鋭い声がガゼボの中に響き渡った。


 エドワード王子と令嬢達が驚いている中、ブライアンが侍女の手首をガシッと掴んでいた。


 ブライアンに掴まれた侍女の手には、液体の入った小瓶が握られていた。


 ブライアンが侍女の手から小瓶を奪い取ると同時に、隠れて警備をしていた騎士達がドヤドヤとやってきて侍女を拘束する。


 エドワード王子は直接小瓶を触らないようにハンカチで包むと、騎士達に取り押さえられている侍女の目の前にかざした。


「これは一体何だ?」


 エドワード王子が少し低い声で問い詰めると、侍女はブルブルと首を振った。


「そ、それは…。お茶に入れる香料です。これを入れると大変美味しくなるんです」


「ふうん。香料ね。それじゃ、君にこの香料の入ったお茶を飲んでみせてもらおうか?」


 エドワード王子は、ハンカチに包んだまま小瓶の蓋を開けると、自分のカップに瓶の中身を少量入れて、侍女の口元に持っていった。


「さあ、飲んでみせろ」


 ぐいとカップを近づけると、侍女は固く口を閉ざしたままプイと顔を逸らした。


「飲めないところを見ると、やはり香料じゃないな。…連れて行って誰に頼まれたか自白させろ!」


「「はっ!」」


 侍女は騎士達に引きずられるようにして連れて行かれた。


 エドワード王子はそれを見送りながら、小瓶をブライアンに渡した。


「中身の確認を頼む」


「わかりました。それにしても、初日からこれでは先が思いやられますね」


「流石にこの後はない事を願うよ」


 エドワード王子は座ったまま顔を青ざめさせている令嬢達に向き直った。


「せっかく来て頂いたのに申し訳ありませんが、本日はこれでお開きにしましょう。今後については追って連絡を差し上げます」


 エドワード王子に柔らかく微笑まれ、令嬢達はハッと我に返ったように居住まいを正した。


「承知いたしました。それではこれで失礼いたします」


 アリシア・ベックリー侯爵令嬢が真っ先に立ち上がってエドワード王子に告げた。


 後の二人は頭を下げるだけが精一杯のようだ。


 エドワード王子はガゼボから退出していく令嬢達を見送りながら、軽くため息をついた。




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