308 令嬢達とのお茶会
婚約者候補を決めてから一週間後、エドワード王子は令嬢達と会う席を設けていた。
その間、ブライアン達には王宮内での反応を窺わせていた。
特に侯爵家の中には選ばれなかった事を不服に思っている者がいるだろうと睨んでいた。
「王宮内で騒ぎを起こすとは考えにくいが、令嬢達が人目につかない場所に行くとは思えないからな。警戒するに越したことはない」
エドワード王子の思ったとおり、候補者に対して不満そうな顔をしている者が少なからずいたようだ。
「わかりやすく不満を口にしてくれるのはいいんですが、中には平静を装ったままため込んでいる人もいますからね。そういうのが一番厄介ですよね」
ため息をつきながらブライアンが零している。
憂鬱そうな顔をしているのは、姉のミカエラに毎日のように愚痴を零されているからのようだ。
「姉自身もエドワード王子に選ばれないとわかっていたはずなんですけどね。どこかで淡い期待を持っていたんでしょうね。今は父が近隣諸国の王族に掛け合ってますが、どうなる事やら…」
エドワード王子はブライアンの嘆きに少しばかり申し訳なさを感じていたが、だからといってミカエラを妻に迎えるつもりはさらさらない。
そのうちに令嬢達とのお茶会の時間になった。
エドワード王子がブライアンを連れてお茶会が開かれるガゼボへと向かった。
そこには既に三人の令嬢がエドワード王子の到着を待っていた。
エドワード王子がガゼボに足を踏み入れると、三人の令嬢は一斉に立ち上がって頭を下げた。
「ああ、堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。どうぞ座って下さい」
エドワード王子に促され、三人は腰を下ろした。
エドワード王子も椅子に座ると改めて三人の令嬢の顔を見回した。
どの令嬢も少し緊張はしているものの、候補に選ばれたという自信に満ちあふれているように見える。
「今日はわざわざ呼び出してしまい申し訳ありません。これから交流を深めていき、皆さんの中から婚約者を決めたいと思います。今日は最初ですので、皆さんに同席していただく機会を設けました」
エドワード王子はそう言って三人の令嬢を見渡した。
令嬢達はにこやかな表情を浮かべているものの、どことなくお互いに牽制しあっているようにも見受けられた。
「ありがとうございます、エドワード様。こうして候補に選んでいただけただけでも大変嬉しく思いますわ」
最初に口を開いたのは、この中でも一番家格が上のアリシア・ベックリー侯爵令嬢だった。
「そうですわ。わたくしも最初にお話を伺った時は嬉しくて天にも昇る気持ちでしたわ」
続いて口を開いたのはキャサリン・コーニッシュ侯爵令嬢だった。
その後をダイアナ・フォックス侯爵令嬢が続ける。
「わたくしも同じですわ。こんな名誉な席にご招待いただき感謝いたします」
三人の視線がぶつかり合い、火花が散ったように見えるのは、あながち気の所為ではないだろうと、エドワード王子は心の中でため息をつくのだった。




