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298 国王からの厳命

 話は少し遡る。



 エドワード王子は父親である国王に呼び出され、執務室に向かった。


 護衛騎士が立っている扉をノックすると「入っていいぞ」という父親の声が聞こえた。


「失礼します」


 部屋に入ると、中央のソファに父親が座り、その背後に宰相が立っていた。


「そこに座りなさい」


 父親の向かい側の席を示され、エドワード王子は少し戸惑いつつも腰を下ろした。


 何となく、話の内容は予想出来たが、そこはあえて気付かないふりで問いかけた。


「父上、お話とは何でしょうか?」


 素知らぬ顔で尋ねると、国王は少し面白くなさそうな顔をした。


「何でしょうか、ではないぞ。そろそろ婚約者選びに本腰を入れてもらわねば困る。学院時代にどこかの令嬢と親密になるかと思えば、誰とも交流を持たなかったし…。すぐに結婚しろとは言わないが、せめて婚約だけでもしてくれ。こちらで選んでも良いが、政略結婚では後々、面倒が起こらないとも限らないからな」


 チラリと宰相を窺うような父親の素振りにエドワード王子は誰の事を言っているのか納得した。


 自分の両親の様子を見れば、結婚に夢や希望など持てはしないが、次期国王になる身としては、結婚して子孫を残さないわけにはいかない。


「そこで、近々婚約者の決まっていない貴族の子女を集めて交流会を開こうと思っている。いいか? 絶対にそこで婚約相手を見つけるんだぞ?」


 父親である国王に厳命されては嫌だと言えるはずもない。


 エドワード王子は渋々と頷いた。


「わかりました。父上のご期待に添えるように頑張ります」


 言いながら『何を頑張るんだ?』と考えた事はおくびにも出さなかった。


 エドワード王子が自分の執務室に戻ると、側近として仕えているブライアンが出迎えた。


「おかえりなさい、エドワード王子。それで、陛下のお話は何だったんですか?」


 エドワード王子はドサリと椅子に腰を下ろすと、背もたれに寄りかかりため息をついた。


「予想どおり、婚約者についての話だったよ。近々、貴族の子女を集めて交流会を開くそうだ。私だけでなく、他にも婚約者が決まっていない令息や令嬢がいるから、そこでまとめて婚約者選びをさせようって魂胆だろうな」


 エドワード王子の指摘にブライアンは納得したようにうなずく。


「そうでしょうね。私の姉であるミカエラも未だに婚約者が決まっていませんからね」


「ミカエラ嬢か。小さい頃はよく一緒に遊んだが、段々と疎遠になったからな。ミカエラ嬢なら引く手数多だと思うのだが、どうしてまだ婚約者がいないんだ?」


 エドワード王子の問いかけにブライアンは肩をすくめた。


「さあね? 私には姉の考えはわかりませんよ」


 ブライアンはそう言いつつも、どこかで確信している事があった。


(父親と姉はエドワード王子の妻の座を狙っているに違いない)と。



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