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293 ブリジット

 ブリジットの姿がエドアルド達から見えない所まで来ると、隠れて護衛していた騎士がスッと姿を現した。


「ブリジット様。予定外の行動を取るのはおやめください」


 護衛騎士のケイトが先ほどエドアルド達が手負いにした魔獣にブリジットが矢を放った事を咎めた。


 そもそも、森には他の魔獣を狩るために入ったのだ。


 ブリジットの矢で倒せたからよいようなものの、場合によってはブリジットに襲いかかってくる可能性もあったのだ。


 けれど、ブリジットはケイトの苦言を軽く聞き流した。


「大丈夫よ。あの魔獣は彼等が手負いにしていたし、そもそも私の矢が外れるわけないでしょ?」


 ブリジットに反論されて、ケイトは苦虫を噛み潰したような顔で押し黙る。


 ブリジットの言う通り、ブリジットの矢は狙った物を外さない。


 それはブリジットが矢を放つ時に風魔法を乗せて射るからだ。


 そのため、矢の威力も他の人の数倍もあり、狙った場所に確実に届く。


 わかっていても、やはりブリジットの護衛をしている以上、危険な真似はさせられないのが現状だ。


「ブリジット様の腕は承知しておりますが、見ず知らずの他人を助けるのはどうかと思われます」


 ケイトの言い分もわかるけれど、ブリジットとしては同じ年頃の人達がピンチに陥っているのを知らん顔は出来なかった。


 それにケイトは気づいていないようだが、ブリジットはエドアルドがもう一人の王子だと気づいていた。


 学院では表立って噂には上がらなかったが、裏では密かに一つ下の学年にもう一人の王子がいると囁かれていた。


 ブリジットも遠目から何度かエドアルドの姿を見ていた。


 あの特徴的な黒縁眼鏡で余計に目立っている事に気づいていないようだったが…。


 今日、初めてエドアルドを間近で見て確信した。


 やはり、エドアルドがもう一人の王子である事を。


『一緒に…』と誘われて嬉しかったが、ブリジットの一存では決められなかった。


 何しろ、冒険者になるに当たって父親から出された条件が、『男性とパーティーは組まない』というものだからだ。


 ブリジットもいずれどこかへ嫁がされる身である。


 そのためにも不安の材料は潰しておきたいのだと理解している。


 あとどのくらい冒険者をしていられるのかはわからないが、後悔をするような事だけはしたくなかった。


「ブリジット様。先ほど侯爵様から連絡がありました。すぐにでも王都にある屋敷に戻るようにとの事です」


 ケイトの言葉にブリジットは内心で眉をひそめた。


 定期報告以外に屋敷に戻るように言われたのはこれが初めてだった。


(案外とこの生活が終わるのは早いのかもしれないわ)


 ブリジットはなんとなくそんな気がした。


「…わかったわ」


 そう返事をすると、先ほどエドアルドからもらった素材を持って冒険者ギルドに向かうのだった。



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