289 調理
「良かったら君も一緒に食べないか? 魔獣を倒してくれたお礼にごちそうするよ?」
「あら、そんなの悪いわ」
ブリジットは僕の誘いを辞退しようとしたが、そんな彼女のお腹が小さく「くうぅ」という音を立てた。
慌てたブリジットは自分のお腹を押さえて真っ赤な顔をする。
「遠慮しなくていいよ。食事はみんなでワイワイと楽しく食べる方がいいよね」
ブリジットに笑いかけると、少し頬を染めた彼女も頷いた。
「そうね。それじゃ遠慮なくごちそうになるわ」
ブリジットはそれから僕が解体した肉を指差した。
「ところでこのお肉はどうやって調理するの?」
「どうやってって、串に刺して焼くだけなんだけど?」
今まではオーウェン達がいたから、食事に関しては任せっきりだった事を思い出した。
アーサーと組んでいた時も、魔獣の肉を食べたりはしていなかったしね。
ブリジットは僕の答えを聞くと少し呆れたような顔を見せた。
「お肉を焼いただけじゃ、そんなに味がしないでしょ? しょうがないわね。素材を譲ってもらったお礼に私が調理するわ」
そう言ってブリジットはマジックバッグからフライパンや調味料を取り出した。
「エドアルドさんとウィルさんは火を起こすための薪を集めてくれるかしら? その間に私はかまどを作っておくわ」
かまどを作る?
一体どうやるんだろうか?
気にはなったけれど、とりあえずはブリジットの言うとおりに薪を集めて来なければ。
僕とウィルは薪を集めるために辺りを探す事にした。
僕とウィルが薪を集めて戻ってくると、ブリジットは土魔法で簡易的なかまどをこしらえていた。
随分と手慣れているけれど、冒険者として長いんだろうか?
僕とウィルは集めた薪をブリジットの指示どおりにかまどに入れた。
ブリジットは薪の一番細いやつに火魔法で火をつけると薪の中に入れた。
小さな火がやがて大きくなり薪に燃え広がる。
ブリジットはフライパンを温めるとお肉の脂肪部分だけを先に入れた。
油が溶け出してフライパン全体に広がっていく。
フライパンから白い煙が上がり始めたところでブリジットはお肉を乗せた。
ジュウという音と共に、肉の焼ける匂いがしてくる。
もうそれだけでウィルは目をキラキラと輝かせている。
ブリジットは肉の上から調味料をかけ始めた。
あれはやっぱり塩と胡椒なのかな?
十分火が通ったところで、ブリジットはトングで肉をひっくり返した。
綺麗な焼き目がついた肉に僕もウィルも目が釘付けになる。
ブリジットは反対側の肉の焼き加減を確認すると、肉の上からタレをかけた。
ジュワーッという音と共にタレの焼ける香ばしい匂いが辺りに広がる。
「うわぁ、エドアルド。もう我慢出来ないよ」
今にも肉に突進しそうなウィルを抑えるのに僕は必死だった。




