286 川辺にて
リンゴのような木の実で多少お腹が満たされたものの、育ち盛りの僕とウィルにはそれだけで満足出来る訳が無い。
さっきの魔獣を狩り損なった分、余計に肉を食べたいという欲求が増している。
この際、何でもいいから肉にありつきたい。
更に森の中を進んで行くと、微かに水の流れるような音が聞こえてきた。
もしかして川が近いのかな?
音のする方へ歩いていくと、案の定川に行き当たった。
それほど川幅は広くなく、川底も見えるくらい水が澄んでいた。
もしかしたら魚がいるかもしれないな。
目を凝らして川の中を覗いてみるが、生憎と魚の姿は確認出来なかった。
そもそも魚がいたところで釣り道具もないし、銛やヤスなどがあるはずもない。
さて、どうしようかと思案していると、向こうの方から茂みをガサガサと揺らす音が聞こえてきた。
「ウィル、何かがこっちに向かってくる。ちょっと隠れよう」
「うん、わかった」
ウィルと一緒に茂みに隠れて様子を窺うと、反対側の茂みの中から鹿に似た魔獣が現れた。
頭には立派な角が二本生えている。
あれで突かれたらひとたまりもないだろうな。
それでも鹿もジビエ料理として食べられていたよね。
水を飲んでいる時なら、隙をついて倒せるかもしれないな。
僕とウィルは顔を見合わせてうなずくと、鹿に似た魔獣が水を飲み出すのをじっと待った。
魔獣はキョロキョロと辺りを忙しなく見回していたが、やがてゆっくりと川辺に近づいていった。
川辺に近づくと、もう一度辺りを見回して安全を確認すると、ようやく頭を屈めて水を飲み始めた。
よし、今だ!
僕とウィルは茂みから飛び出すと魔獣に向かって突進していった。
僕達が魔獣に近づくより早く、魔獣は僕達に気づいて水を飲むのを止めて振り返った。
カキィーン!
僕の剣と魔獣の角がぶつかり合う。
その隙にウィルはドラゴンの右腕で魔獣の身体を引き裂いた。
「ギャアッ!」
魔獣は声を上げると、今度はウィルに向かって角を振り回す。
僕への注意が逸れたのを見て、今度は僕が魔獣の身体に剣を振り下ろした。
「ギャアッ!」
魔獣は再び叫び声を上げると、今度は僕を突き刺そうと頭を下げて突進してくる。
手負いの獣ほど、なりふり構わないものはないとよく言うけれど、確かにそうだった。
直撃は免れたものの、魔獣の角は僕の腕を掠めていった。
「痛っ!」
左腕は魔獣の角によってシャツと皮膚の一部が引き裂かれた。
「この野郎! よくもエドアルドを!」
ウィルが反撃するよりも早く、魔獣の身体がドッと横倒しになった。
何だ!?
一体何が起こったんだ!?




