283 依頼書
冒険者ギルドに到着すると、普段よりは人の姿がまばらだった。
まぁ、既にお昼に近い時間だから、この時間までグズグズしている冒険者なんてそうそういないからね。
それでも依頼書が貼ってあるボードにはまだ何枚か依頼書が残っていた。
ウィルと一緒に依頼書に目を通したが、既にめぼしい物はなかった。
薬草の採取とか、害虫の駆除とか、初級の冒険者がこなすような依頼ばかりだ。
「やっぱり、あまり残ってなかったね」
「ええーっ! お肉ー!」
ウィルが不満そうな声をあげるけれど、無いものは仕方がない。
依頼書が無くても森に行って狩りは出来るけれど、どうせなら依頼をこなして報酬を上げた方が効率が良いよね。
それを考えれば薬草の採取でもいいんだけれど、いかんせん実入りが少ない。
まぁ、無いよりマシかな、と思いながら依頼書を剥がそうと手を伸ばしたところで、ギルド職員が新たな依頼書を貼り付けていった。
どうやら今入ってきたばかりの依頼のようだ。
チラリとその依頼書に目を通すと『ゴブリンの討伐』と書いてある。
ゴブリンかぁ。
異世界ものでは定番の魔物だよね。
あまり食べるような描写はなかったと思うけれど、食べられるんだろうか?
「ウィル。『ゴブリンの討伐』ってあるけど、行ってみるか?」
「ゴブリン? それって美味しいの?」
「…さあ?」
「まぁ、いいか。とりあえずそれに行ってみようよ」
ウィルはそう言うなり依頼書をボードから剥がした。
…やれやれ。
まぁ、食べて美味しくなかったら、何か他の魔獣でも倒せばいいだけだ。
僕達は冒険者ギルドを出ると、依頼書に書いてあるゴブリンの目撃場所の森へと向かった。
森の中をどんどんと奥へと進んで行くが、一向にゴブリンの姿が見えない。
ゴブリンどころか小さな魔獣にすら出くわさないなんて、一体どういう事だ?
更に進んで行くと、向こうの方で何やら騒がしい声が聞こえてくる。
人の声とは違う音に僕とウィルはそっと身を忍ばせながら近づいた。
茂みの陰から辺りの様子を窺うと、そこでは数匹のゴブリン達が、小さな魔獣達を襲っているのを目撃した。
どうやらこの辺りの小さな魔獣達はこのゴブリン達に手当たり次第に殺されていたようだ。
「あいつらー! 僕の獲物をー!」
ウィルがギリギリと歯ぎしりをしながら唸っている。
ゴブリン達はどう見ても食べるためではなく、ただ殺すためだけに小さな魔獣を襲っているからね。
ウィルが怒るのも無理はないか。
「ウィル、行くよ。準備はいい?」
「勿論だよ。行くよ!」
僕とウィルは茂みから飛び出すとゴブリン達に向かって行くのだった。




