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279 魔石

 僕は目の前に置かれた魔石を手に取った。


 ピンポン玉くらいの大きさでサファイアのような青い色をしている。


 もっとずっしりと重いかと思っていたけれど、案外軽いのでちょっと拍子抜けした。


 これが本物のサファイアだったら、一体いくらくらいするんだろう?


 なんて考える僕はちょっとさもしいかな?


「その魔石には私とヴィーの魔力を登録してあります。この先、何か問題が起きた時はこの魔石を握って私達を呼んでください。どちらかがエドアルド君の元に駆けつけると約束します」


 オーウェンがそう説明してくれた。


 なんと!


 この魔石でオーウェンかヴィンセントを呼べるなんて、超便利じゃない?


 僕のためにわざわざこんな物を用意してくれたなんて、非常に有難い。


「ありがとう。だけど、本当に僕がもらってもいいのかな?」


『やっぱりやめます』と言われないかとドキドキしながら尋ねると、オーウェンは笑いながらこくりと頷いた。


「旅を始めて間もないうちに離脱するのですから、せめてこれくらいはさせてください」


 確かにオーウェン達と旅を始めてまだ一週間も経っていないからな。


 まさかこんなに早くオーウェンたちが僕との旅を終えるなんて誰が想像しただろうか。


「わかった。ありがたく受け取っておくよ。なるべくオーウェン達を呼び出すような事態にならないようにするよ」


 僕はその青く光る魔石を胸の内ポケットへと入れた。


 魔石自体が熱を帯びているのか、じんわりとした温かさが伝わってくる。


 オーウェンは『問題が起きた時』とは言ったけれど、流石にいつでも呼んでいいわけではないだろう。


 黒の女王とイチャイチャしている時に呼び出したりしないように気を付けないとね。


 だけど、僕の命を狙っている存在がいる以上、不測の事態が起こらないとも限らない。


 だけど、それは決して僕のせいではないからね。


 僕の命を狙ってくる奴が悪いんだからね。


 そんな言い訳を心の中で浮かべつつ、僕はカップに残っていたお茶を飲み干して立ち上がった。


 いつまでも僕がこの場にいるわけにはいかないだろう。


 これから四人で、或いはオーウェンと黒の女王、ヴィンセントとジュリアスで話したい事がたくさんあるに違いない。


 オーウェン達と別れるのは少し寂しいけれど、これが『今生の別れ』ってわけでもない。


「それじゃ、僕とウィルはこれで御暇するよ。ほら、ウィル、行くよ」


「え? 待って! まだお菓子食べたい!」


 そう言ってウィルは目の前のお菓子を必死で口の中に押し込んでいる。


 …まったく!


 食い意地の張ったドラゴンだな。




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