276 城内の散策
もうすっかり体調が良くなったジュリアスと共に寝室を出たところで、オーウェンが僕に呼びかけた。
「エドアルド君。せっかく私の城に来たのですから中を案内させましょう」
言い終わると同時に小さな妖精達が僕の目の前に現れた。
ティンカーベルのような羽根をひらひらさせながら宙に浮かんでいる。
「あなた達、エドアルド君とウィルを案内してあげてください。私達は少し話をしてきます」
そう言ってオーウェンは黒の女王とジュリアス、ヴィンセントを伴ってどこかへ行ってしまった。
引き止める間もなく取り残された僕は困惑して言葉も出ない。
だが、初めて訪れた城の中を無闇に歩き回るよりは、妖精達に案内してもらった方がいいだろう。
何を話し合うのかは気になるところだけれど、この城では僕とウィルは部外者だ。
せめてみんなの邪魔にならないようにしていよう。
妖精達はひらひらと舞いながら僕達に話しかけてきた。
「それではお城の中をご案内いたしますね。まずはこちらへどうぞ」
僕とウィルは妖精達の後をついてお城の中を歩く。
廊下には至る所に鉢植えが置いてあって、色とりどりの花が咲き誇っている。
「こちらのお花はフローラ様が管理をしてくださっています。季節によって咲いている花が変わるんですよ」
「フローラ様?」
「はい。お花を司る精霊様です。オーウェン様に仕えていらっしゃるんですよ。他にも木の精霊様であるドライアド様がいらっしゃいますが、ドライアド様は主に庭や森の木々などを請け負っていらっしゃいます」
花の側を通るとそれぞれの花の香りが微かに漂ってくる。
花によって微妙に漂ってくる香りが違うのが面白い。
廊下の突き当たりには妖精達を招いた舞踏会が開催されるホールがあった。
天井に吊るされたシャンデリアの豪華さには思わず口をあんぐりと開けてしまった。
ウィルもポカンと目を瞬いている。
「凄いな。一体どうやって作ったんだ?」
「こちらはドワーフの職人達が腕に縒りをかけて作ってくださいました。オーウェン様もお気に入りのシャンデリアなんですよ」
妖精達が我が事のように自慢してくる。
それがあまりにも微笑ましくて思わず口元を綻ばせる。
城の中が終わると今度は庭を案内してもらった。
こちらでは城の中以上の色とりどりの花が花壇に植えられている。
その花の間を蜂や蝶がせっせと飛び回って蜜を集めている。
「こちらで集めた蜜をお料理やお菓子に使っているんですよ」
そう説明を受けているところで一匹の蝶がひらひらと飛んできた。
よく見るとその蝶は人間に蝶の羽が生えた妖精だ。
「こんにちは。今採ったばかりの花の蜜をどうぞ」
そう言って僕とウィルの手のひらに集めたばかりの花の蜜をのせた。
ペロリと舌ですくい取ると、ほんのりと甘い蜜の味が口の中いっぱいに広がった。
甘い蜜を堪能していると、僕達を案内してくれていた妖精がこう告げた。
「オーウェン様がエドアルド様達にお話があるそうです。お城の中に戻りましょう」




