275 ジュリアスの現状
「ちょっと見せてください」
オーウェンがジュリアスの両手を取ると自分の両手と繋いだ。
何をするんだろうか。
じっと見ていると二人が手を繋いでいる所がぼんやりと光っているように見える。
「こんなバカな…」
ジュリアスから手を離したオーウェンがポツリと零した。
信じられないものを見るような目でまじまじとジュリアスを見つめている。
「どうした、オーウェン?」
ヴィンセントに尋ねられて、オーウェンは少し震える声で呟いた。
「ジュリアスの寿命がほんの少しだけ延びている。これもエドアルド君の魔力によるものなのか?」
オーウェンはそのまま僕を見つめてくるけれど、そんな事を僕に訊かれても答えようがない。
どう返していいか答えに窮していると、黒の女王がオーウェンの袖を引っ張った。
「オーウェン。わからない事を考えていても仕方がないわ。今はただ、ジュリアスがこうして今までの姿を取り戻して、私達と一緒にいられる時間が延びた事を喜びましょうよ」
黒の女王に微笑みかけられて、オーウェンはやにさがった顔を見せる。
「ああ、そうだね。この様子なら私達の子供が生まれるまでジュリアスは生きていられそうだ」
んん?
オーウェンと黒の女王の間に子供が生まれるまでだって?
さっきヴィンセントは『五十年くらいかかる』とか言っていたけれど、五十年がほんの少しって事?
確かにエルフの寿命からしたら五十年なんてほんの少しという認識で間違いはないと思うけどね。
どちらにしてもジュリアスがもう少しだけ生きていられるとわかってホッとした。
ジュリアスも自分の弟か妹が生まれるまで生きていられそうだとわかって嬉しそうな顔をしている。
いや、それよりもヴィンセントと一緒にいられる事の方が嬉しいのかもしれないな。
ベッドに起き上がっていたジュリアスが、布団から出て立ち上がろうとした。
「ジュリアス! まだ寝ていた方が良くないか?」
ヴィンセントとオーウェンが慌ててジュリアスを押し留めようとする。
二人共、随分と過保護だな。
まぁ、さっきまでのジュリアスの姿を見ていたらそれも当然か。
「父上もヴィーもそんな心配はいりませんよ。もうすっかり良くなりましたから」
ジュリアスは笑顔でオーウェンとヴィンセントの動きを制すと、僕のところへやって来た。
「ありがとう、エドアルド君。君の魔力のおかげでこうして生きながらえる事ができました。本当にありがとう」
ジュリアスはそう言って僕に抱きついてきた。
喜んでもらえるのは嬉しいけれど、僕にもいまいち良くわかっていないんだよね。
それよりも、ジュリアスの肩越しに見えるヴィンセントの顔が少し怖いように見えるのはきっと気の所為だよね?




