273 ジュリアスの無念
椅子に座っているジュリアスの身体がぐらりと傾いた。
「ジュリアス!」
ヴィンセントがすぐさまジュリアスの身体を支えるが、ジュリアスはぐったりとして息も絶え絶えだ。
「すぐにジュリアスをベッドに寝かせましょう」
オーウェンがそう言って妖精達に指示を出している間に、ヴィンセントがジュリアスの身体を抱きかかえた。
ヴィンセントにお姫様抱っこされたジュリアスは、先ほどよりも更に一回り小さくなったように見える。
僕とウィルも皆の後を追ってジュリアスの部屋へと向かった。
ベッドに寝かされたジュリアスは既に百歳を超えた老人のような顔になっていた。
オーウェンとヴィンセントはジュリアスの枕元に立ち、ジュリアスの顔を覗きこむとジュリアスがうっすらと目を開けた。
「ジュリアス! 気が付きましたか?」
オーウェンの問いかけにジュリアスはうっすらと口元に笑みを浮かべた。
「…父上…。申し訳ありません。…どうやら私は父上と黒の女王の間に生まれる子を見る前に天に召されそうです…」
「何を言うのですか!? そんな事はありません! あなたはまだまだ生きられるに決まっています!」
オーウェンはそう言うが、どう見てもそこまでの寿命があるようには見えなかった。
それはジュリアス自身が一番良くわかっているのだろう。
ジュリアスの目はどこか諦めたような眼差しをしている。
「…父上…。いくらエルフの王と言えども、人の生死を操る事など出来ません。それに父上の血を与えてエルフにする事はハーフエルフの私には利き目がないですからね。どうか心配なさらないでください。私は母上の所に行って、父上の事を見守っていますから…」
ジュリアスにそう告げられてオーウェンは悔しそうに唇を噛み締めていた。
そんなオーウェンの背中を黒の女王がそっとさすっている。
どうやらジュリアスはハーフエルフのため、オーウェンから血を与えられてエルフになる事は出来ないらしい。
ヴィンセントがジュリアスの手をそっと握ると、ジュリアスはゆっくりとヴィンセントに視線を向けた。
「…ヴィー…。もっとヴィーといられると思っていたのに…。それが出来ないどころか、こんな醜い姿を晒してしまって…」
悲しそうなジュリアスの表情を見る限り、ジュリアスはヴィンセントの事が好きなんだと察した。
好きな人にこんな年老いた姿のまま死んでしまうなんて、辛いだろうな。
お互いに年を重ねて少しずつ年老いていくのならともかく、先ほどまでは青年の姿だったのが、一気に老け込んだ姿になるなんて、僕なら耐えられない。
せめてもう一度、先ほどまでのような青年の姿に戻ればいいのに…。
そう考えた途端、僕の身体から魔力が溢れ出し、ジュリアスの身体を包んだ。




