270 起床
カーテンの隙間から差し込んでくる日差しと小鳥のさえずりで目が覚めた。
昨日と同じ天蓋付きベッドの天井の模様にハッとしたけれど、すぐに隣に寝ているのがドラゴン姿のウィルだと思い出した。
軽く伸びをしてベッドに起き上がると同時にまたしても小さな妖精達が姿を見せた。
「おはようございまーす。よくお休みになれましたか?」
「おはようございまーす。お着替えをお手伝いいたしまーす」
妖精達が羽根を羽ばたかせる度にキラキラとした光がこぼれ落ちる。
シャボン玉のようにしばらくしたら消えてしまうものだけれど、とても綺麗だ。
「ありがとう。だけど着替えは自分で出来るから大丈夫だよ」
妖精達の手伝いを断ると、クローゼットを開けて適当に服を見繕って着替えた。
何しろ、昨日着ていた服はお風呂場で脱いだ途端、消え失せてしまったのだ。
きっと洗濯をしてくれるために回収されていったのだろう。
きっとそうに違いない。
僕が身支度を終えた頃になってようやくウィルが目を覚ました。
「おはよー。お腹空いた…」
相変わらずの挨拶に何も返す言葉がない。
「起きたのならさっさと人型になった方がいいよ。そんな姿じゃ妖精達が怖がって近づかないかもしれないからさ」
「えー! そんなぁ! こっちの方が楽なのに…。…まぁ、いいけどさ」
ウィルはブツブツ言いながらも人間の姿になるが、着ている服は昨日のままだ。
「ウィルも着替えたら? せっかく用意してもらったんだからさ」
クローゼットを開けて中を見せると、ウィルは目を丸くした。
「なんでこんなにいっぱいあるんだ? 僕とエドアルドしかいないよね? それとも、他に誰かが来るのか?」
そう言いながらもどこかウキウキしたように服をとっかえひっかえ身体に当てている。
ウィルが着替え終わったのを見計らったように小さな妖精達が姿を現した。
「着替え終わりましたかー? 朝ご飯の用意ができましたのでご案内いたしまーす」
「えっ、朝ご飯!? 食べる食べる。エドアルド、早く行こうよ」
ウィルに急かされるように僕は妖精達の後を追ってお城の中を歩く。
昨日、ジュリアスに会った部屋とは別の方向に歩いて行くと、妖精達が扉の前で止まった。
妖精達の姿が消えると同時に扉が開く。
テーブルには既にジュリアスとヴィンセントがいるのが見えた。
「こちらへどうぞー」
妖精達が椅子の背もたれの縁に腰掛けて僕とウィルを手招きする。
ヴィンセント達の向かい側に腰を下ろすと、別の扉が開いてオーウェンと黒の女王が現れた。
オーウェンの腕に自分の腕を絡ませている黒の女王は、昨日よりも更に美しさに拍車がかかっているように見えた。
そんな黒の女王を見ているオーウェンは、見たこともないくらい柔らかな表情をしている。
昨日のあの態度は一体なんだったのかとツッコミたくなるくらいだ。
結局僕は二人に良いように出汁に使われたという事だろうか?
イチャつく二人をなるべく視界に入れないように、僕は黙々と食事を平らげるのだった。




