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268 打ち明け話

 しかし、オーウェンと黒の女王が夫婦だとわかって、今度は別の疑問が発生した。


 それでは、今目の前にいるジュリアスの母親は黒の女王なのだろうか?


 だが、ジュリアスはオーウェンの事は『父上』と呼んだが、黒の女王を『母上』とは呼ばずに『黒の女王』と呼んでいる。


 つまり、ジュリアスの母親は黒の女王ではなく、別にいる事になる。


 だが、待てよ。


 そもそもエルフは長命種のはずだ。


 それなのにオーウェンは『妻は亡くなった』と言った。


 と言う事は、ジュリアスの母親はエルフではなかったのだろうか?


 それともエルフでありながら、何らかの原因で亡くなってしまったのだろうか?


 今会ったばかりのジュリアスに、そこまで突っ込んだ質問をしていいものかどうか迷ってしまう。


 チラリとジュリアスの顔を窺うと、バッチリと目が合ってしまい、慌てて視線を逸らした。


 そんな僕を見てジュリアスがコテンと首をかしげた。


「エドアルド君、どうかしましたか? 何か私に聞きたい事でもあるのですか?」


「え、…いや、…あの…」


 しどろもどろになりながら、どう質問したらいいのか迷っていると、ヴィンセントが何かを思い出したように「ああ」と声を漏らした。


「エドアルドはオーウェンに息子がいると聞いて驚いていたからな。ジュリアスの母親がどうして亡くなったのかを知りたいのだろう」


 ヴィンセントは僕が聞きたかった事をそのまま口にした。


 もう少しオブラートに包んだような言い方をしてくれてもいいのにな。


 少し気まずくなって身を縮こまらせると、ジュリアスはフッと僕を安心させるように微笑んだ。


「ああ、そんな事ですか。別に大した話ではありませんよ。私の母は人間でしたからね。父上とは生きている時間が違いますからね。天寿を全うしただけですよ」


 それを聞いて納得したと同時に、どうしてヴィンセントのように自分の血を飲ませてエルフにしなかったのか、という疑問が湧いた。


 チラリとヴィンセントの顔を見ると、おどけたように肩をすくめた。


「ジュリアスの母親が拒否したらしい。それに元々はオーウェンと黒の女王はエルフ界では一緒になる事を望まれていたらしいからな。それを知っていたからジュリアスの母親は黒の女王に遠慮したんだろう。オーウェンもそれがあるから黒の女王には頭が上がらないんだよ」


 つまり、黒の女王と結婚する前に人間であるジュリアスの母親と浮気をしたって事なのかな?


 それでよくもまあ、黒の女王が自分に迫ってきたって言えたもんだ。


 それにヴィンセントも『黒の女王が攻めてきた』って聞いた時に『このままでいいのか?』なんて言えたよね。


 オーウェンとヴィンセントの言う事をどこまで信用していいのかわからなくなってきたよ。


 はあっと大きく溜め息をつくと、ジュリアスが同情するような目を向けてきた。


「エドアルド君、お疲れでしょう。今日はこちらに泊まって行ってください。今、部屋を用意させますから。そちらのドラゴン君と一緒の部屋でよろしいですね」


 ウィルは人間の姿をしているのだけれど、ジュリアスも黒の女王もウィルがドラゴンだと認識しているようだ。


 オーウェンがここにいない今、宿屋に戻る事も出来ないので、ジュリアスの提案は有難い。


 僕とウィルは小さな妖精に先導されて用意された部屋に向かった。




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