265 オーウェンの反応
ジリジリとこちらににじり寄ってくるオーウェンに対して黒の女王は自分の胸元に手を掛けた。
「それ以上近寄ったらこの坊やに私の胸を見せちゃうわよ?」
それを聞いたオーウェンがピシリとその場で足を止める。
ん?
何か今、変な事を言わなかったか?
とてもオーウェンに対する脅し文句には聞こえなかったのだが、オーウェンは驚いたように目を見開いている。
「駄目です! あなたの身体を見て良いのは私だけです!」
オーウェンが必死に叫ぶのを黒の女王は満足そうな顔で微笑んでいる。
はあっ!?
一体どういう意味なんだ?
わけがわからずにヴィンセントの方を見ると、彼は「やれやれ」といった顔をしている。
それとは対照的にウィルはキョトンとした顔で黒の女王とオーウェンを見比べている。
黒の女王は抱え込んでいた僕の頭から身体を離すと、ゆっくりと起き上がった。
「あら、そう。それじゃ、ゆっくりと見てもらいましょうか」
黒の女王はそう言うと僕に視線を移した。
彼女の目が妖しく光ると僕の身体は硬直したまま宙に浮かび上がった。
「うわっ!」
そのままゆっくりとヴィンセントの方へと運ばれていく。
その途中でチラリとオーウェンの姿が目に入った。
オーウェンはホッとしたような表情をしていたが、それが僕が解放されたからなのか、黒の女王の裸体を見なかっ
たからなのかは判断がつかなかった。
ヴィンセントの前に運ばれた僕の身体をヴィンセントが下から支えた。
途端に僕の身体の硬直が解けてヴィンセントにお姫様抱っこされた形になった。
お姫様抱っこなんてされるよりはする方がいいな。
そんな事を考えながら身をよじったが、ヴィンセントは僕を抱っこしたまま下ろしてくれない。
「ヴィー、さっさとこの部屋から出て行きなさい! その小さなドラゴンも一緒にね」
黒の女王に命じられてヴィンセントは僕を抱えたまま、ウィルを促して部屋を出て行く。
ヴィンセントに抱っこされたまま、オーウェンと黒の女王の様子を見ていた。
オーウェンは素早く黒の女王の元に近づいたと思ったら、濃厚なキスを交わしていた。
なんで?
敵対しているんじゃなかったのか?
バタンと扉が閉まってオーウェンと黒の女王が視界から消えたところでようやくヴィンセントは僕を床に下ろした。
「もう少し早く下ろしてくれても良かったのに…」
ぷうと頬を膨らませると、ヴィンセントはツンと僕の頬を突いた。
「まあ、いいから。それよりも早くここから離れるぞ。いつまでもここにいたらまた何を言われるかわからないからな」
ヴィンセントが僕とウィルを急き立てるようにして歩き出した。
さっきの二人の様子からして今何をしているのかは想像に難くない。
ウィルだけは頭に疑問符を浮かべたまま僕達と一緒に歩いている。
ヴィンセントは迷いなく歩いているがここは一体何処なのだろう?
それに、あの二人は恋人同士なんだろうか?
あれ?
だとすると、オーウェンとヴィンセントは恋人同士じゃなかったのか?
それとも二股?
わからない事だらけで混乱している僕はヴィンセントについて歩くのがやっとだった。




