264 目覚め
ペチペチと頬を叩かれているような感覚がある。
んー、何だよ。
気持ちよく寝ているのに起こさないでくれよ。
そう思い、片手で振り払おうとした途端、身動きが取れない事に気づいてパッと目を見開いた。
僕の目に飛び込んできたのは、天蓋付きベッドの綺麗な布の模様だった。
…何で僕はこんなベッドに寝ているんだ?
すぐには自分の置かれた状況が思い出せずに、ぐるぐると思考回路を巡らせる。
そうだ!
オーウェン達とアルフヘイムに来たんだった!
そうしたらオーウェンに助けを求めてきたエルフが僕を拘束して…。
まさか、あのエルフが黒の女王の手下だとは思いもよらなかったが…。
それにしてもまたもや拉致されるなんて、僕ってそういう体質なんだろうか?
やれやれと首を横に向けた僕の目に女性の大きな胸が飛び込んできた。
あまりの大きさに思わず目が釘付けになる。
どこかの姉妹と張り合えるくらいの大きさがありそうだ…じゃなくて、これは一体誰だ?
そっと視線を動かすと、そこには少し呆れたような顔をした蝶のエルフの顔があった。
「随分と呑気な坊やねぇ。自分が攫われたという自覚があるのかしら? ちょっと眠らせただけなのに爆睡してちっとも起きやしないし…。起きたら起きたで私の胸を凝視するし…。そんなにこの胸が気に入った?」
そう言うなり彼女は大きな胸を僕の顔にグイグイと押しつけてくる。
服を着ているとはいえ、薄い布一枚だけじゃ胸の柔らかさが丸わかりだ。
こんな状況じゃなかったら良かったのに…って、僕は何を言ってるんだ?
大きな胸に鼻と口を塞がれて呼吸困難に陥りそうになった時、バンッと扉の開く音がした。
「黒の女王! エドアルド君を返してください!」
その声に弾かれたように彼女の胸が僕から離れた。
何とか窒息死から免れた僕が頭を起こすと、息せき切ったオーウェンとヴィンセント、ウィルの姿がそこにあった。
黒の女王?
今確かにオーウェンはそう言ったよね?
と、いう事は、今僕と一緒にベッドの上にいるこの人が黒の女王なのか?
まさか、黒の女王本人が怪我をしたエルフのフリをして僕達の前に現れたって事か?
あまりにも予想外の事に僕の理解が追いついていかない。
そんな僕をよそに黒の女王は僕の頭を抱き寄せ、豊かな胸にギュッと押し付けた。
「あら、嫌だわ。せっかくこの可愛い坊やと楽しいひとときを過ごしていたのに邪魔しないでくれる?」
僕の頬に柔らかい胸がこれでもか、というくらいに押し付けられる。
こんな状況じゃなければ、この胸の感触を堪能出来るのに…って、いやそうじゃない。
何とかしてこの人質状態を回避しないと…。
ジタバタともがいてみるが、僕の身体は硬直したままピクリとも動かせない。
オーウェン達も僕が黒の女王にピッタリと引っ付いているからか、迂闊には手出しが出来ないようだ。
そのためかオーウェンは悔しそうに顔を歪めている。
「黒の女王。あなたの目的は私であってエドアルド君ではないはずです。私がそちらに行きますからエドアルド君を解放してください!」
ジリジリとオーウェンがこちらに近寄ってくるけれど、黒の女王は更に僕の頭を抱え込んでくる。
一体どうしたらこの状況を打破出来るんだ?




