263 アルフヘイムへ行く
オーウェンが床に手をかざすと、そこには大きな魔法陣が現れた。
どうやらアルフヘイムへと繋がる転移陣のようだ。
さっそく僕とウィルがその上に移動すると、オーウェンとヴィンセントも乗ってきた。
オーウェンに助けを求めてきた蝶の羽を持ったエルフも僕の横に立った。
「本当にエドアルド君も行くのですか?」
オーウェンが再度僕に尋ねてくる。
オーウェンは僕の気が変わるのを期待しているようだが、生憎と一度決めた事を撤回するようなそんな薄情な事をするつもりはない。
「何度聞かれても僕の気が変わる事はないよ。そんな事よりも、今こうしている間にもアルフヘイムがどんな状態に陥っているのかわからないんだから、さっさと行こうよ」
そう言って拳をギュッと握りしめると、オーウェンは諦めたように軽く息を吐いた。
「わかりました。でも、くれぐれも私から離れたりしないでくださいね」
「わかってるよ。むやみにオーウェンから離れたりしないから安心して」
ニコッと笑いかけたけれど、なぜかオーウェンはまたしても深々と息を吐いた。
なぜだ?
「オーウェン。準備はいいぞ」
ヴィンセントが声をかけると、オーウェンは魔法陣に向かって魔力を流し始めた。
魔法陣がキラキラと光を帯びて魔力で満たされていくに従って、周りの景色がどんどんとぼやけていく。
ふと気がつけば、僕達はどこかの森の中に立っていた。
魔法陣の光が消えると共に魔法陣自体も消え去り、剥き出しの地面が現れる。
キョロキョロと辺りを見回すと、向こうの方にお城のような建物が見えた。
だが、そのお城はあちこちが壊されており、更に火の手が上がっている箇所が随所に見られる。
「オーウェン。急がなきゃお城が燃えちゃうよ」
そう言うなり僕はお城に向かって走り出した。
「あ! エドアルド君!」
焦ったようなオーウェンの声が僕の背中から聞こえてくるが、そんなのは構っていられない。
無残な姿になっているお城だが、こうなる前はどんなに綺麗なお城だったのか、想像するに難くない。
そんな綺麗なお城をここまで破壊するなんて、黒の女王はなんて酷い奴なんだ。
あと少しでお城に到達する位置まで来た所で僕はようやく足を止めた。
クルリと振り返ると、そこにはオーウェン達の姿はなかった。
どうやらここに先に到着したのは僕だけだったようだ。
ふと、誰かの気配を感じて振り向くと、そこには助けを求めてきた蝶のエルフの姿があった。
「なんだ。君も来ていたんだね…」
そう声をかけたが、すぐに彼女の様子がおかしい事に気がついた。
彼女の背中の蝶の羽の模様が、綺麗な青や赤、黄色が徐々に真っ黒なクロアゲハへと変化していく。
「…え?」
彼女の変化に固まっていると、それに気づいた彼女の口がニィッと弧を描いた。
ヤバい!
彼女から離れないと…。
そう思い、一歩後ずさろうとした途端、僕の身体は拘束された。
「な、何を…」
そう言いかけた時、彼女の目が怪しく光り、僕は意識を失ったのだった。




