262 加勢
「オーウェン。今すぐにアルフヘイムに戻ろうよ! こうしている間にも黒の女王がアルフヘイムを滅茶苦茶にしているかもしれないよ。僕に何が出来るかはわからないけれど、僕も一緒に戦うからね。ウィルも力を貸してくれるよね?」
クルリとウィルの方を向くと、ウィルはちょっとキョトンとした顔を見せた。
「え? 僕も戦うの?」
「当たり前じゃないか。だってウィルはドラゴンだろう? アルフヘイムに攻め込んできた奴なんてウィルが本気を出せばひとたまりもないはずだよ」
魔獣相手だってあっという間に倒してしまうんだから、黒の女王が引き連れてきた魔獣だって簡単に倒してしまうに違いない。
黒の女王がどれほどの力を持っているかはわからないが、オーウェンだけでなく、僕とヴィンセントが一緒になっ
て戦えばきっと撃退できるはずだ。
そんなふうに決意を固めてオーウェンを見ると、なぜかオーウェンはちょっと焦ったような表情をしていた。
「ちょ、ちょっと待ってください。まさか、エドアルド君もアルフヘイムに来るつもりなんですか?」
うん?
どうしてオーウェンはそんなに焦っているんだ?
「当然ですよ。今まで散々オーウェンには手助けをしてもらいましたからね。今度は僕がオーウェンを助ける番です」
『人間世界の事には関知しない』と言いながらも何かと僕を助けてくれるオーウェンに、僕は何も恩返しが出来ていない。
それにアルフヘイムがどんな所かちょっと興味があるんだよね。
オーウェンの息子だというジュリアスにも会ってみたいし…。
ただ単に僕の好奇心を満たすために、オーウェンに加勢するつもりと言われても言い過ぎではないな。
そんな本音を隠して僕は、オーウェンに『恩返しのつもり』をアピールする。
「エドアルド君の気持ちは有難いのですが、普通の人間であるエドアルド君を私達の戦いに巻き込むわけにはいきません。どうかここは大人しく待っていてもらえませんか?」
そう懇願するオーウェンにはいつもの自信たっぷりの様子が見受けられない。
僕の事なんて今すぐにも放り出してアルフヘイムに戻りたいだろうに、それが出来ないのはオーウェンが優しすぎるからだろう。
だからこそ、黒の女王が攻めてきても、彼等を壊滅させるほど攻撃しないのかもしれない。
壊滅させられないとわかっているから、黒の女王も何度もアルフヘイムを攻め落とそうと目論んでいるのだろう。
だったら尚更僕が加勢して黒の女王を完膚なきまでに叩きのめさなければならないだろう。
そう決意を込めてオーウェンを見れば、オーウェンは目を丸くしている。
「オーウェン。絶対に足手まといにはなりませんから、すぐにアルフヘイムに向かいましょう!」
「は、はい…」
僕の勢いに気圧されたのか、オーウェンが思わずといった風情で返事をした。
オーウェンの横でヴィンセントが苦いものを噛んだような顔をしている。
こうして僕達は急遽アルフヘイムに行く事になった。




