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261 質問

「黒の女王。不可侵条約を結んだのにそれを反故にするとは一体どういうつもりなんでしょうか?」


 オーウェンがポツリと呟くが、その声には隠しきれないほどの怒気が含まれている。


 沈黙が続く中、最初に口を開いたのはヴィンセントだった。


「どうするんだ、オーウェン? このまま手をこまぬいて見ているだけなのか?」


 それを聞いたオーウェンはフッと口元を歪めた。


「そんなわけがないでしょう。黒の女王には私の国に攻め込んだ事を後悔させてやりますよ」


 その笑みにはゾクッとするような凄みが含まれている。


 ブリザードのような冷気を感じて僕とウィルはブルブルと身体を震わせた。


 少しでもその冷気から逃れようと、僕はオーウェンの気を紛らわせるために話しかけた。


「オーウェンってもしかしてアルフヘイムの国王なの?」


 そう尋ねるとオーウェンは少し虚を突かれたような顔をする。


「おや? 言っていませんでしたか? おっしゃる通り、私はアルフヘイムの国王です。今は息子のジュリアスが代理として統治していますけれどね」


 え?


 ジュリアスってオーウェンの息子なの?


 てっきりオーウェンは独身なのかと思っていたけれど、子供がいたんだ。


 ヴィンセントと恋仲だっていう事は、ジュリアスの母親って人は今はオーウェンの奥さんじゃないのかな?


 それとも、奥さんをほったらかしてヴィンセントと一緒にいるんだろうか?


 一つ疑問が解決したと思ったら、また別の疑問が浮上してくる。


「えっと…。じゃあ、オーウェンには奥さんがいるの?」


 恐る恐る尋ねると、オーウェンはちょっとムッとしたような表情になった。


「エドアルド君。あなたは私が不倫をしているとでも? 私も妻に先立たれましてね。その後でヴィーに出会ったんですよ」


 …なるほど。


 二人とも奥さんに先立たれたという境遇が一緒だから、仲良くなったのかもしれないな。


 あともう一つ、質問したいんだけれど、これを口にしたら、またもやオーウェンが不機嫌になりそうだな。


 だけど、聞かない事には先に進めないから、僕は意を決してオーウェンに尋ねた。


「それで、『黒の女王』っていうのは?」


 僕が『黒の女王』と口にした途端、オーウェンの不機嫌さが倍増した。


 何だか、部屋の温度が一気に下がったようだ。


「その名を口にするのも腹立たしいですね。彼女はダークエルフの女王です。私が妻を亡くしたと知った途端、『自分と結婚しろ』と迫ってきたんですよ。どうせ彼女の魂胆はわかっています。私と結婚してアルフヘイムまでも手中に収めようと思っているんですよ」


 オーウェンが吐き捨てるように言ってのける。


 どうやら黒の女王は相当な野心家のようだ。


 ダークエルフの世界のみならず、アルフヘイムまでも統治したいようだ。


 そんな黒の女王がアルフヘイムに攻め込んできたのなら、さっさと戻らないとアルフヘイムが黒の女王の手に落ちてしまうぞ。



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