259 食べ歩き
冒険者ギルドに到着して受付カウンターに先ほど狩ったワイルドボアの牙を二匹分提出した。
「随分と大きな牙ですね。ただいまお部屋が空いておりませんので、鑑定を先にいたしますね。そちらでしばらくお待ちください」
どうやら報酬を受け取るための部屋が塞がっているようだ。
「わかりました」
僕達が了承すると受付の女性はワイルドボアの牙を持って鑑定室に向かった。
僕達が手持ち無沙汰に待っていると、入り口が開いて遅れてきたオーウェンが姿を見せる。
僕達が立っているのを見ると少し目を丸くした。
「おや、まだそこにいたのですか?」
「ああ、今は部屋が塞がっているらしい。だから、先に鑑定をしてもらっている」
ヴィンセントの説明にオーウェンは納得したようにうなずいた。
「先に鑑定中でしたか。間に合ったようですね」
オーウェンが軽く微笑みながらこちらに近寄ってくる。
『忘れ物をした』と言っておきながら特に何かを持っているわけではない。
一体何を忘れたのかと尋ねようと口を開きかけたところで、受付の女性がこちらに声をかけてきた。
「お待たせいたしました。鑑定が終わりましたので、こちらの部屋にお入りください」
支払いを受け取るための別室へと案内されて、僕達はぞろぞろとそちらに移動する。
ソファに腰を下ろすと、お金の入った袋を持った女性が入って来た。
「お待たせいたしました。こちらが今回の報酬になります。ご確認ください」
差し出された紙にはワイルドボアの牙の買い取り金額が書かれている。
その金額と袋に入っている金額に間違いがないことを確認した。
「はい。間違いありません」
「それではこちらの受け取り欄にサインをお願いします」
書類の一番下の受け取り欄にサインをすると、女性はこくりとうなずいた。
「ありがとうございます。これで買い取りは終了となります」
僕はお金を懐に仕舞うと先に部屋を出た。
女性は最後に部屋を出ると、扉の表示を『使用中』から『空室』へと変えた。
だが、すぐに別の職員がその部屋に他の冒険者達を案内して入って行く。
それを横目で見ながら僕達は冒険者ギルドを後にした。
ぶらぶらと歩きながら宿屋へと向かっていると、ウィルが僕の袖を引っ張った。
「エドアルド! なんかいい匂いがする! あれ食べたい!」
そう言ってウィルが指差した方を見ると、遥か向こうの店先で串焼きを売っていた。
ウィルは人間じゃないからずいぶんと嗅覚が良いようだ。
その店に近づくにつれて、確かに香ばしい匂いが僕の鼻をくすぐった。
ワイルドボアの報酬も手に入ったし、たまにはこういうのも食べたいよね。
今にも駆け出しそうなウィルにオーウェンが苦笑する。
「私とヴィーはいりませんから二人だけで食べなさい」
「あ、じゃあ僕はオーウェンの分も合わせて二本食べるからね」
ウィルがちゃっかりとオーウェンの分も食べると言い出した。
それなら僕はヴィンセントの分を食べてやるぞ。
ウィルと二人で店先に立つと、店員が生きのいい声をあげた。
「いらっしゃい! 焼きたてで美味しいよ!」
確かに鉄板の上で串に刺した肉がジュウジュウと美味しそうな音を立てている。
「四本ください」
「はいよ」
店員にお金を渡して、ウィルと二人で両手に一本ずつ串を持つ。
ウィルが待ちきれなかったように肉にガブリと噛み付いた。
「うーん、うまあい!」
ぶらぶらと歩きながらウィルと二人で串焼きを食べながら歩き出す。
オーウェンとヴィンセントはそんな僕達を見て、クスクスと笑っていた。




