257 ウィルの変化
シャルル達の姿が消えて、森には僕達だけが残された。
シャルルはイーストエンド国に戻っても大丈夫なのだろうか?
他にもシャルルの命を狙っている者がいるんじゃないだろうか?
そんな不安が僕の胸をよぎる。
オーウェンはそんな僕の気持ちを察したのか、軽く息を吐いた。
「エドアルド君が気にする事ではありませんよ。他国の内政に干渉する権利はどこにもありませんからね」
オーウェンの言う通り、余計なお世話だと言われるだろう。
そもそも、僕自身も継承権問題でこうして王都を追われた立場だからね。
他人の事より自分の事を心配しろって話だよね。
そう考えていると、オーウェンは「やれやれ」と大げさにため息をついた。
「せっかくのワイルドボア討伐にとんだ邪魔が入りましたね。今日はもうこれで切り上げましょうか」
そうは言ってもワイルドボアも二頭は仕留められたし、証拠としてワイルドボアの牙を冒険者ギルドに提出すれ
ば、多少の賞金はもらえるはずだ。
冒険者ギルドに向かうために僕達は森の中を歩き出した。
ウィルは歩きながら、途中で見かけた蝶々を追いかけたり、見慣れない虫に興味を示したりとあちこち走り回っている。
姿形こそ僕とほぼ変わらない大きさだから失念してしまっているけれど、実際はまだ生まれて間もないドラゴンだから、いろんな物に興味を示すのは当然かな。
そんなウィルの姿をオーウェンもヴィンセントも微笑ましいものを見るような目で追っている。
「…まったく。知らない者が見たら少し頭の足りない奴だと思われても仕方がないぞ」
ヴィンセントが随分と失礼な事を言ってのけるが、確かにそれは言えるかもな。
そんなふうにはしゃぐのならもう少し小さい子供の姿になればいいのに…。
そう思った途端、ウィルの姿がポンと音を立てて小さな男の子の姿へと変化した。
「「「「え!?」」」」
誰もが一様に驚きの声を上げる。
五歳児くらいの大きさになったウィルはキョロキョロと自分の身体を見下ろしている。
「なんで!? どうしてこんなにちっちゃくなったんだ?」
ウィルは自分の手を見比べたかと思うと、パッと僕達の方を振り返った。
「うわっ! みんなの身体がでかくなってる!」
いやいや。
ウィルが小さくなっただけで、僕達の方は変わってないからね。
オーウェンはまじまじとウィルの身体を眺めていたが、やがてハッとしたように僕の方を向いた。
「エドアルド君。もしかしてウィルが小さくなればいいと考えたりしませんでしたか?」
オーウェンに問われて僕はこくりとうなずいた。
「確かに、ウィルがはしゃいでいたから、『そんなにはしゃぐのならもう少し小さい子供の姿になればいいのに』とは考えたけど…」
そう答えるとオーウェンは「ああ~」とおでこに手を当てた。
「エドアルド君はウィルと契約魔術を交わしてますからね。エドアルド君の考えた事がウィルに反映されたのでしょう」
何と!
僕の考えた事がウィルに反映されるなんて思ってもみなかった。
それが本当ならば、うっかりウィルの事を考えると、とんでもない事になりそうだ。
「今はこのままでいいですけれど、森を抜ける前には元に戻してあげてくださいね」
「…はい」
オーウェンの笑っていない目で見られて、僕は小さく返事をした。
ウィルは逆に小さくなった事でさらに嬉々として蝶々や虫を追いかけ回すのだった。




