254 僕の役割
オーウェンは僕を手招きするが、その胡散臭い微笑みに僕の足はジリジリと後退りを始める。
「おや、エドアルド君。この期に及んで後ずさりとはいい度胸をしてますね」
なおも下がろうとしたところで、トンと背中が何かに突き当たる。
こんな所に壁なんてないはずだが…。
不思議に思って振り返ると、そこには僕の背中を押してくるウィルがいた。
「エドアルド。頼むからオーウェンの言う事を聞いてよ。こっちまでとばっちりが来るからさ」
ガタガタと震えながらウィルは僕の身体をオーウェンへ差し出してくる。
ウィルってば、僕の従魔じゃなかったっけ?
流石のドラゴンも生まれたてだとオーウェンが怖いようだ。
相手は長い時を生き永らえているエルフだからね。
怖いのは当然だな。
シャルルとジャンも微妙に頬を引きつらせている。
これ以上抵抗しても無駄なのはわかっているので、僕は諦めてオーウェンに近寄った。
「はじめから素直に来ればいいのに…。まあ、いいでしょう。それではエドアルド君、そのまま彼等の前に立ってください」
「え? 僕が? この姿のままで?」
今の僕の姿はどこからどう見てもただの冒険者にすぎない格好だ。
てっきり何かに姿を変えられると思っていたので、オーウェンの言葉に驚いた。
「彼等は幻覚を見ている状態ですからね。エドアルド君がそのままの姿で前に現れても彼等には他の恐ろしい姿に映るんですよ」
なるほど。
オーウェンによって幻覚を見せられている状態だから、僕も何か恐ろしい姿に見えるわけか。
一体どんな姿に変えられているんだろう?
少しばかり気になるが、それよりも彼等の前に現れて何をすればいいんだろう?
「それで? 彼等の前に立って何をすればいいんだ?」
「そこはエドアルド君に任せます。この森の主として彼等の行動を窘めてください。そうしたら私が彼等を捕縛しま
す。それでは威厳のある森の主を演じてくださいな」
ええっ!?
そんな簡単に言わないでよ。
威厳のある森の主って何だ?
いきなりそんな事を言われても困るんだけど…。
抵抗しようにも僕にはそんな選択肢は残されていない。
まあ、いいか。
そのあたりはオーウェンの幻覚がそれらしく見せてくれるだろう。
僕は諦めて茂みを移動すると、彼等の前に姿を現した。
突然姿を現した僕に彼等はギョッとしたように立ち尽くした。
「な!? お前は誰だ!? 一体どこから現れた!?」
僕は普通に彼等の前に立ったのに、彼等には別の景色が見えているようだ。
さて、何と言って彼等を脅せばいいのかな?




