252 追跡
三人の亡骸は棺へと納められて僕達の前に横たわっている。
棺に納めたはいいが、これをどうやってイーストエンド国まで持って行くんだろう?
シャルルとジャンは棺に向かって深々と頭を下げた。
ジャンはそのうちの一つの横に跪き「…父上」と力無く呟いた。
シャルルはジャンにかける言葉が見つからないようで、ギュッと唇を噛み締めたままジャンと棺を見つめている。
「オーウェン。こうしている間にもジャン達を襲った連中はどんどん遠くに逃げているよね。何とかして捕まえられない?」
一刻も早く連中を追いかけるべきだと思って尋ねると、オーウェンはニッコリと笑みを浮かべた。
「私がみすみす連中を逃すとお思いですか? 随分と見くびられたものですね」
その途端、僕の背中を悪寒が走る。
「え? いや…その…」
しどろもどろで答えていると、オーウェンはついとシャルルとジャンに顔を向けた。
「手助けはいたしますが、条件があります。決して私達の事を詮索しない事。それが守れるのであれば、あなた達を襲った連中を捕まえてあげましょう。よろしいですか?」
詮索しない事って。
どうやらオーウェンはエルフとしての力を存分に発揮するつもりのようだ。
他国の者が自分の国で人殺しをした事を相当怒っているようだな。
シャルルとジャンはオーウェンの提案に少し戸惑っていたが、すぐにシャルルが大きくうなずいた。
「彼等に正当な裁きが下されるのなら僕はあなた達がたとえ悪魔でも構いません。どうかお願いします」
悪魔だなんて、シャルルも随分と極端だな。
悪魔に願ったらどんな対価を要求されるかわからないのに。
ある意味オーウェンも悪魔もそんなに変わらないかもな。
そう思った途端、オーウェンにジロリと睨まれた。
まさか、僕の心を読んだわけじゃないよね。
「よろしいでしょう。それでは連中を追いかけましょうか。…ああ。棺をこのままにしてはおけませんね。一緒に運ぶとしましょう」
オーウェンがパチンと指を鳴らすと、その場に荷馬車が現れた。
荷台に棺がひとりでに積み込まれていく。
その様子を見ても、もうシャルルとジャンは驚いてはいなかった。
ただ乾いた笑みを浮かべている。
「それじゃ、連中を追いかけましょうか」
オーウェンがざっと辺りを見回すと、向こうの方がキラリと光った。
「どうやら向こうに行ったようですね。行きましょう」
そう言ってオーウェンはスタスタと歩き出した。
ヴィンセントとウィルもそれに続いていく。
シャルルとジャンも立ち上がるとそれに続こうとしたが、ジャンが不意によろけた。
「ジャン!」
シャルルが慌ててジャンを支える。
「申し訳ありません、シャルル様。思うように力が入りません」
ジャンは腕を切り落とされて出血していたからね。
少し貧血気味なのかもしれない。
「シャルル。僕が反対側を支えるから、君はそっちを支えてくれ」
二人でジャンを挟んで支えながらオーウェン達の後を追う。
僕達の後ろを荷馬車がゆっくりと付いてくる。
御者もいないのに、と思って目を凝らしたら、馬の頭の上に小さな妖精が見えた。
どうやらあの妖精が御者代わりのようだ。
僕は何も見なかったふりで前を向いた。




