251 シャルルの話
オーウェンの指摘にシャルルとジャンはしばらく黙っていたが、やがてシャルルが重い口を開いた。
「確かに僕達はイーストエンド国から逃れてきた。だけど、王位継承権争いなんて、そんな事望んではいなかった。確かに僕は第一王子として生まれたけれど、この目の色のせいで王位を継ぐには相応しくないと言われてきたんだ。幸いすぐ下の弟は王族特有の紫の瞳を持って生まれたから、誰もが弟を次期国王と認めていたんだ。それなのに…」
そう言ってシャルルは唇を噛み締めた。
何か良からぬ勢力に彼が巻き込まれたのだろうか?
黙り込んだシャルルに代わって今度はジャンが話し始めた。
「間もなく第二王子の立太子が行われるはずなのですが、第二王子派に敵対する貴族達が『シャルル様の方が国王に相応しい』と言い出したのです。それを聞いた一部の第二王子派がシャルル様の存在を不安視したようで、王国内は危険な状態になりました。そこでシャルル様は王位を継ぐ意志はないと示すためにイーストエンド国を出たのですが、どうやら追っ手を差し向けられていたようです」
ジャンは力無く、周りに倒れている男達を見回した。
まさかこの国に来てまで命を狙われるとは思っていなかったのだろう。
「…なんで…。僕の命だけを狙えばいいのに…。僕に付いてきてくれたばかりに命を落とすなんて…」
座り込んだまま、シャルルはポロポロと涙を零す。
王位を望んでもないのに、その存在を邪魔だと思われて命を狙われるなんて理不尽以外の何物でもないよね。
そういう点では僕とシャルルは似た者同士になるのかな?
『気持ちはわかるよ。実は僕も…』
なんて言うわけにもいかないのでそこは黙っておいた。
だけど、これからどうしたらいいんだろう。
このままシャルル達を放っておくのも気が引ける。
そもそも、このアルズベリー王国で人殺しをされて野放しにしておいていいものなのだろうか?
そう思ってオーウェンとヴィンセントの方を見ると二人とも同じ事を考えていたようで凄みのある笑顔を見せていた。
「我が国でこのような暴挙を起こされて許すわけには参りませんね」
「ああ。このまま黙って指をくわえて見ているわけにはいかないな」
二人とも『フフフ』『アハハ』と不敵な笑みを浮かべている。
ウィルが首を竦めて二人からそっと距離を取っている。
僕も今すぐにまわれ右をしてこの場から立ち去りたいが、即座に首根っこを掴まれるのがオチだな。
「ともかく、この方達をこのままにしてはおけませんね。このまま放置すれば魔獣のエサになるのは確実でしょうからね。かと言ってこの場で埋葬するわけにもいきませんね。故郷に連れて帰ってあげるのがベストでしょう」
そう言ってオーウェンはパチンと指を鳴らした。
すると、どこからともなく棺が現れ、倒れていた遺体が次々と棺に納められていく。
シャルルとジャンはポカンと口を開けたまま、その様子を眺めている。
やれやれ。
オーウェンも僕の事をとやかく言えないと思うんだけどね。




