250 シャルルの正体
「う、腕がくっついた…」
シャルルは倒れている男の傍らにひざまずくと僕が今くっつけた腕をまじまじと確認している。
繋ぎ目などどこにも見えない綺麗な状態の腕がそこにあった。
「確かに切り離されてたよね? まさか、僕の見間違いだった?」
シャルルは男の腕をあちこちひっくり返しながら見ているが、切られた跡はどこにもなかった。
「凄いよ、エドアルド! まさかそんな魔法が使えるとは思わなかったな」
ウィルだけは目をキラキラとさせて僕を褒め称えてくれる。
いや、逆に恥ずかしくなるからそれはやめてほしい。
オーウェンとヴィンセントはあからさまにため息をついてみせる。
二人にしてみれば、まだ敵か味方かわからないシャルルの仲間を勝手に治癒したのが容認出来ないのだろう。
沈黙が流れる中、気を失っている男が小さく「ううっ」と呻いた。
「ジャン! しっかりしろ! 僕がわかるか!?」
シャルルの呼びかけに男がうっすらと目を開けて、シャルルを見た。
「…シャルル様、ご無事ですか? 他の者は…」
シャルルはジャンの問いには答えずにきつく唇を噛み締めた。
それだけでジャンはすべてを察したようだった。
「…そうですか。やはり…。ともあれシャルル様がご無事で何よりです。私はこの様に腕を切り落とされ…。…あれ?」
ジャンは切り落とされたはずの右腕を上げてしげしげと眺めた。
その顔が信じられないものを見たように見開かれる。
「腕が、ある? どうして? 確かに切り落とされたはずなのに…」
ジャンはガバっと身を起こすと自分の右腕を何度もひっくり返して見ている。
シャルルとジャンが腕を気にしている間、今すぐにこの場を立ち去りたいけれど、そうは問屋が卸さないようだ。
何度も自分の腕を確かめていたジャンはふと顔を上げて、そこでようやく僕達の存在に気づいた。
「シャルル様! この者達は?」
警戒心を露わにしたジャンの声にシャルルが落ち着かせるような声で話す。
「この人達は敵じゃないよ。さっきワイルドボアに襲われた僕を助けてくれたんだ。それに、そこにいる眼鏡をかけた人がジャンの腕をくっ付けてくれたんだ。むしろ僕達の方が何者なのかと警戒されているみたいだね」
シャルルはそう言って僕達の顔を見回した。
シャルルの言う通り、オーウェンとヴィンセントは未だにシャルル達への警戒を解いていない。
ウィルは…何も考えていないのが丸わかりだな。
沈黙が流れる中、それを破ったのはオーウェンの意外な言葉だった。
「…もしかして、そなた達はイーストエンド国の者か? あの国では王位継承権争いが起きていると聞いたが…。 察するところ、シャルルがその当事者か?」
その言葉を聞いた途端、シャルルとジャンの顔にサッと緊張が走った。
その顔を見るに、どうやら図星のようだ。
王位継承権争いの当事者という事はシャルルはイーストエンド国の王子なのだろうか?




