247 ワイルドボア
森に入るとオーウェンはどんどんと奥に進んでいった。
一体どこまで進んで行くんだ?
「オーウェン、まだ奥に進むのか?」
しびれを切らしたウィルが少し不満そうな声を上げる。
「美味しいお肉が食べたいんでしょう? 我慢して歩きなさい」
そう返されてはウィルもそれ以上文句を言えないようだ。
頬を膨らませながらも黙々と歩いている。
すると、先頭を歩いていたヴィンセントが不意に足を止めた。
「今向こうで茂みが揺れたぞ。ワイルドボアがいるかもしれない」
ヴィンセントが警戒したのと同時に茂みの中から何かが飛び出してきた。
黒い大きな巨体がこちらに向かって突進してくる。
その黒い巨体の大きさは、少し小さめの牛くらいの大きさだった。
僕が知っているイノシシはあんなに大きくはなかったぞ。
ワイルドボアは真っ直ぐ僕達を目掛けて走ってくる。
その口には鋭い牙が二本突き出ている。
そういえばイノシシはあの牙で攻撃してくるんだっけ。
あの牙で太ももを刺されたら、大量出血で死に至る事もあるらしい。
ヤバい!
避けなきゃ!
だが、突然の事で身体が思うように動かない。
「エドアルド君!」
オーウェンの声と共に僕の身体が突き飛ばされた。
ドサッと僕の身体が地面に倒れ込む。
イノシシはそのまま真っ直ぐに走って正面の木に体当たりして止まった。
僕が身体を起こしてイノシシの方を見ると、イノシシは木に体当たりした衝撃で気絶して倒れていた。
これがいわゆる『猪突猛進』ってやつかな。
それにしても、オーウェンが突き飛ばしてくれなかったら、今頃はワイルドボアの牙に串刺しにされていたかもしれないな。
あのワイルドボアの大きさだと、お腹あたりに牙が刺さったかもしれない。
そう考えてゾッとした。
「やれやれ。もうちょっとで危ないところでしたね。気を抜いてはいけませんよ。今のうちに仕留めてしまいましょう」
オーウェンに言われてヴィンセントは剣を抜くと倒れているワイルドボアの身体に突き刺した。
ワイルドボアの身体がピクピクとけいれんしたかと思うと、それもすぐに収まった。
少し可哀想な気もするけれど、討伐依頼が出されている以上、仕方のない事だ。
僕は心の中でワイルドボアに向かって手を合わせた。
「それじゃ、さっさと解体しましょうか。ウィルが待ちきれないみたいですからね」
オーウェンの言う通り、ウィルはよだれを垂らさんばかりにワイルドボアを見つめている。
オーウェンに言われるまま、ワイルドボアの皮を剥ぎ取り、肉を解体していった。
その間にオーウェンとウィルは焚き火の準備を始めた。
今食べる分だけの肉を残して、他の肉はオーウェンが亜空間ポケットにしまった。
切った肉を焚き火で焼き始めると、香ばしい匂いが辺りに漂い始める。
「もういいかな?」
ウィルがソワソワと焼き色が付いた肉に手を伸ばす。
まだ片面しか焼いていないのに気が早すぎだろう。
まあ、ウィルはドラゴンだから生肉でも大丈夫かもな。
こうして僕達は焼きたての肉を堪能した。




