246 変な奴
食事を終えてそろそろ外に出ようかというタイミングで、後ろの席の男の一人がこんな事を言い出した。
「最近、変な奴がこの街をうろついていないか?」
変な奴?
まさか、僕達の事じゃないよね?
オーウェンにもその声が聞こえたようで、立ち上がりかけた身体をスッと元に戻した。
「なんだ? 変な奴って?」
「多分、イーストエンド国の連中だと思うんだけどさ。妙に目つきが悪いんだよ。何かを探しているらしくあちこちをキョロキョロと嗅ぎ回っているんだ」
イーストエンド国とはこの国の西隣にある国だ。
この国とは交流も盛んだから、旅行者や冒険者が出入りしていてもおかしくはないが、目つきの悪い連中というのは気になる。
一体何を探しているんだろうか?
まさか僕を探してる?
いやいや、それはないな。
オーウェン達と一緒にいれば目立つから、その連中が気づかないとは思えない。
きっと別の何かを探しているんだろう。
オーウェンが立ち上がったのをきっかけに僕も立ち上がった。
「ありがとうございましたー」
店員の声に送られて食堂を出ると、そのまま冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドの入り口を入ろうとしたところで、そこに誰かが立っているのに気がついた。
その男は冒険者ギルドに入る人の顔をジロジロと舐め回すように見つめてくる。
何だかあまり気分のいいものではないな。
もしかしたら、さっきの会話に出て来た変な奴のうちの一人なんだろうか?
オーウェンとヴィンセントはそんな不躾な視線など意に介さないふりで冒険者ギルドの中に入っていった。
ウィルはというと、その男に向かって「べー」っと舌を出している。
男はムッとした顔を見せたが、ウィルに突っかかることもなく、忌々しそうな顔でウィルを見送っている。
ここでウィル相手にケンカをするよりも、出入り口を見張る事に集中したいようだ。
どうやら連中は人を探しているようだ。
冒険者ギルドを覗いているあたり、探しているのは冒険者なのだろうか?
中に入るとオーウェンがクルリと振り返り、ウィルのおでこをコンと小突いた。
「ウィルったら、ジロジロ見られて気分が悪いのはわかりますが、余計ないざこざを招かないようにしてください」
「チェ! わかったよ」
ウィルが小突かれたおでこをさすりながら口を尖らせる。
感情を露わにするあたり、やっぱりまだ子供だな。
「さて、今日はどの依頼にしましょうか」
依頼書の貼られたボードの前に来ると、オーウェンに尋ねられた。
「昨日は生け捕りばかりでちっとも面白くなかったよ。だから今日は美味しい肉が食べたい」
僕が答えるより先にウィルがオーウェンに詰め寄っていく。
「美味しい肉ですか。…それならば、これなんかいいんじゃないですか?」
オーウェンが手に取った依頼書には『ワイルドボアの討伐』と書かれていた。
ボアって確かイノシシの事だったよね。
前世でもイノシシはジビエ料理として食べていたから、ウィルにはちょうどいいかもね。
僕達はさっそくワイルドボアを討伐するために森に向かった。




