245 噂話
しばらく待っていると僕達のテーブルに料理が運ばれてきた。
パンに目玉焼き、サラダにスープと良くあるような組み合わせの朝食セットだった。
食事を始めた僕の耳に後ろの席の男達の会話が飛び込んできた。
「そういえば、聞いたか? エドワード王子の話」
エドワード王子?
その言葉に僕は思わず聞き耳を立ててしまう。
エドワード王子には何も告げずに王都を離れてしまったけれど、元気でいるんだろうか?
「エドワード王子の話? いや、何も聞いていないけど、何かあったのか?」
別の男の声に最初の男の声が続く。
「なんでも、今度婚約者を決めるためのパーティが開かれるらしいぞ」
「婚約者? まだ婚約者も決まっていなかったんだっけ?」
「ああ。以前、隣国の王女との婚約話が持ち上がったが、王女は結局宰相の息子と婚約してしまったからな。そこで今度は国内の貴族令嬢と婚約させるらしい」
どうやらエドワード王子の婚約者を本格的に決めるようだ。
エドワード王子の婚約者の座を狙っている貴族令嬢は大勢いるだろうが、早く決めてしまわないと選ばれなかった貴族令嬢の嫁ぎ先がいつまでも決まらないだろうからね。
貴族令嬢がいつまでも結婚しなかったら『行かず後家』だと陰口を叩かれかねないからね。
後ろの男達の話はなおも続く。
「で? エドワード王子の婚約者の有力候補はどこのご令嬢なんだ?」
その問いに情報通らしい男が答える。
「今の王妃様が宰相の妹だからな。宰相の娘とは婚約しないだろう。そうなるともう一つの公爵家の娘が有力候補って噂だぜ」
もう一つの公爵家というと、クリフトンの家であるダウナー公爵家の事だろう。
だが、クリフトンに妹がいるとは知らなかった。
そこへまた別の男が話に加わってきた。
「でもダウナー公爵家の娘ってまだ小さいんじゃなかったか?」
「ん? そうだったか?」
「確か学院に入学したばかりだと聞いたような…」
学院に入学したばかりだとしたらまだ十歳でエドワード王子とは五歳も離れている事になる。
「だとしたら他の年齢の近いご令嬢達が黙っちゃいないよな。今度のパーティでは熾烈な婚約者争いが勃発しそうだぜ」
男達はさも面白そうにケラケラと笑い合っている。
そんな噂話を聞いても僕には何も出来る事はない。
オーウェンはこの話を聞かせるために僕をこの食堂に連れてきたのだろうか?
チラリと正面に座るオーウェンに視線を移すと、オーウェンはニコリと微笑んだ。
「たまには世間の噂話に耳を傾けるのもいいでしょう?」
確かにエドワード王子の近況が聞けたのはいいけれど、同時に何も出来ないもどかしさも痛感させられた。
「…そうですね」
ほんの少しのイラつきを込めて返事をすると、オーウェンは苦笑をこぼす。
後ろの男達の会話は今度は別の話題に移っていった。
もっとエドワード王子の話を聞きたかったのだが残念だ。




