241 初めての雷魔法
そもそも亜空間ポケットに人間を入れられるのならば、とっくの昔に僕はその中に放り込まれていただろう。
誘拐事件を起こさせないためにも亜空間ポケットには人間を入れられないような設定で作られたに違いない。
そんな事を考えているうちに今度は別のスクワロルが現れたようだ。
木の枝の上をスクワロルが走っていき、枝の端へと追い詰められた。
ヴィンセントがそのスクワロルを狙って雷魔法を発動させた。
だが、それよりも一瞬早くスクワロルは枝を蹴ると別の枝に向かって跳んだ。
ヴィンセントの魔法は何もない空間を突き抜けていき、その隙にスクワロルは跳び移った枝を駆けてどこかへ消えていった。
「おや。ヴィーが外すとは珍しいですね」
クスクスと笑うオーウェンにヴィンセントがムスッとした顔を見せる。
だが、それよりも更に不満そうな顔をしているのがウィルだ。
「ねぇねぇ。あいつはちょっとでも傷つけちゃ駄目なの? 僕が火を噴けば一瞬であいつを仕留められると思うんだけどさ」
そんな物騒な言葉を口にするウィルにオーウェンは大げさにため息をついてみせる。
「今回は生け捕りですからね。ウィルが火を噴いたらあの大きさでは一瞬で黒焦げになりますよ。残念ですが今回は
大人しくしていてください」
オーウェンにたしなめられてもウィルはますます口をとがらせている。
そんなやり取りをしているうちにまたもやヴィンセントがスクワロルを一匹枝から撃ち落とした。
僕は素早く地面に落ちたスクワロルのところに駆け寄る。
オーウェンがしていたように首の後ろを摘んで持ち上げた。
ぐったりと意識のないスクワロルは少し大きめのリスといったところで確かに可愛かった。
餌付けして手なずければ可愛い愛玩動物になるのかな?
「エドアルド君もスクワロルを雷魔法で撃ってみますか?」
僕の手からスクワロルを受け取ったオーウェンが提案してくる。
「僕に出来るかな?」
自信なさげにつぶやくとヴィンセントがレクチャーしてくれた。
「スクワロルを気絶させるだけだからそれほど魔力を込める必要はない。すばしっこいから狙いを定めたらすぐに撃たないと逃げられるぞ」
ヴィンセントに言われるまま僕は木の枝を注意深く見渡した。
しばらくじっと待っていると、チョロチョロと枝を動き回るスクワロルが見えた。
それを目で追っているとやがて動きを止めて、木の実を取って齧り始めた。
よし、今だ!
僕は手のひらをスクワロルに向けて雷魔法を放った。
「ギャッ!」
短く叫んだスクワロルがドサッと地面に落ちる。
すかさず落ちたスクワロルのもとに駆け寄ると、ピクピクとけいれんしているスクワロルの姿がそこにあった。
何とも言えない罪悪感にかられながら、僕はスクワロルを持ち上げるとオーウェンに渡した。




