240 スクワロル
オーウェンの後をついていくと、昨日とは違う門から街の外に出た。
どうやらこの先の森の中に『スクワロル』がいるらしい。
『生け捕り』という依頼からしてあまり危険のない生き物なのだろうか?
オーウェンは迷うこともなくスタスタと森の中を進んでいく。
やがてオーウェンは木が生い茂っている一角で足を止めた。
「このあたりにいそうなんですけどね」
そう言ってオーウェンは生い茂っている木を見上げた。
つられて僕も木を見上げるけれど、生き物がいるようには見えない。
ふと、目の端を何かが走っていったような動きを捉えた。
(今のは何だ?)
慌ててそちらに目をやるが、既にそこには何もいなかった。
「相変わらずすばしっこいですね」
オーウェンが少し呆れたような声を上げる。
どうやら今のがスクワロルだったようだ。
だが、ほんの一瞬過ぎて僕にはその姿が何なのか皆目見当がつかない。
「ねぇ、オーウェン。スクワロルってどんな生き物なの?」
僕が尋ねるとオーウェンは上を見上げたまま答える。
「見た目はそれなりに可愛いのですが、とにかくすばしっこいのが特徴ですね。あと、突然噛みついてきたりしますので、不用意に手を出さない方が賢明ですよ」
見た目が可愛くてすばしっこい?
なんとなくリスを思い浮かべるんだけれど、違うかな?
それに、そんなすばしっこい生き物をどうやって生け捕りにするんだろう?
すると、また目の端のほうで何かが木の枝の上を走るのが見えた。
すかさずそちらに目をやると、やはりリスに似た生き物が枝の上に走って行くのが見えた。
「ヴィー、早く」
オーウェンがヴィンセントに呼びかけるとヴィンセントは手のひらをスクワロルに向けた。
するとヴィンセントの手のひらから光が飛び出しスクワロルに命中した。
「ギャッ」
短い声を上げてスクワロルが木の枝から地面へと落ちる。
今のは雷魔法だろうか?
だけど、死んだりしていないよね?
僕は急いで地面に落ちたスクワロルのもとに向かった。
そこに倒れていたのは少し大きめのリスのような生き物だった。
胸の辺りが上下しているところをみると、どうやら死んだりはしていないようだ。
オーウェンは倒れているスクワロルの首の後ろを摘んで持ち上げると亜空間ポケットにスクワロルを入れた。
「オーウェン、生きているのを入れて大丈夫なの?」
オーウェンはニコッと僕に笑顔を向ける。
「二十四時間以内だったら大丈夫ですよ。それを過ぎると強制的に排出されますけどね」
それを聞いて僕の頭にある考えが浮かんだ。
もしかして人間も亜空間ポケットに入れたり出来るんだろうか?
だとすると、亜空間ポケットを使って誘拐なんて事も出来るのかな?
そんな僕の考えを見透かしたのか、オーウェンが付け加えた。
「ああ、人間は入れませんよ。そんな事が出来たら誘拐事件が頻繁に起こりますからね」
それを聞いて僕はホッと胸をなで下ろしたのだった。




