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蟻が侵略者達を食らい尽くすまで  作者: 未来
3章 北の国へ
29/30

29鉄牢獄②

 皆さま、いつも「蟻が侵略者達を食らい尽くすまで」読んで頂きありがとうございました。

 次回30話で最後になりますのでよろしくお願いします。

 時は遡り王達が避難所の中に完全に閉じ込められた所から始まる。


「誰か!! 誰かここを開けろぉ!! 私は王だぞぉ!! 開けてくれぇ!!」


 爆破により鍵が壊れ鉄の壁となった扉を必死に王が叩く。


 護衛だった者が蟻人間になっていたこ事に気づかず、彼らの自爆攻撃により水も食料も全て灰と化し残された王と貴族達は死を待つ囚人と化していた。


 天井にある厳重に鉄網が嵌められており通気口は狭く子供すら出入りができない。


 すでに閉じ込められて一日が過ぎていた。


「開けろよ…俺は腹が減ってんだ!!」


 必死に扉を叩く無様な王に向け怒りと殺意の目が向けられていた。


「うるせぇな、このブタ…」


 いつも王の我儘を聞いていた大臣が空腹と怒りに満ちた顔で椅子を持ち上げて他の側近たちも硬い物を持って王を囲んでいた。


「な、なんだお前たち!! 俺は腹が減ってんだ、早くこの扉をあけろぉ…ぐげぇ!!」

 

  側近たちに命令した王の頭に椅子の角が落とされた。


「ぐげぇ!」


  頭部に硬い物を叩き込まれて王は地面に倒れた。


「うるせぇんだよこの無能の馬鹿が!!」


「お前のせいで俺たちはこんな目にあったんだ!! 責任とって死ねぇ!!」


「この屑野郎、あの不細工王妃の奴隷が!!」


  極限状態に追い詰められて男達の怒りが爆発した。倒れた王はそのまま数人がかりで殴打されて大量に血を動かくなった。王を殴り倒しても怒りの火は消えずそのまま中にいる者同士で殺し合いを初めてしまった。


  爆死した護衛の持っていた剣で心臓や喉を刺された者や壊れた椅子の部品を目に刺されて絶命する者もいた。


  鉄の牢獄にて醜い争いが起きて数時間後。


「うぐぅ…」


  殴打されて気絶していた王が目を覚ました時、目の前は血の地獄と化していた。


「ひぃ!?」


  王は悲鳴を上げて回りを見渡すと血を流した死体しかなく誰も息をしてなかった。


「こ、ここはどこだ…どうして、私はこんなところに…」


  頭を殴打された事で記憶をなくした王は恐怖で震えて鍵の壊れた鉄の扉に向かって叫ぶ。


「た、助けてください!! ひ、人が死んでるんです!! だ、誰か早く!!」


  記憶を失った王は外にいるであろう誰かに向け叫んだ。だが蟻人間により支配されたこの国で王を助ける者はいなかった。


「誰か、早く…」


  やがて喉が枯れて王は声を出すのをやめた。水や食べる物がないか避難所の中を探すが口にできる物はすでに燃えてなくなっていた。あるのは無駄に金がかけられた装飾品や男達が殺し合いに使った剣や凶器だけだった。


「いやだぁ、誰か、誰か助けて…」


  記憶を失う前では絶対に感じなかった空腹感や孤独に涙が流れる。

  横暴な貴族を放置して大きな貧富な差を生み出し宝石好きな王妃の奴隷となりながら自分の保身だけ大事にしていた卑劣で矮小な王の報いだった。


「喉が渇いた、腹が空いたぁ…」


  空腹と渇きに息が荒くなり王の目線の先には動かなくなった複数の死体があった。

  その死体達が生前、自分とどんな関係だったのか分からないが彼の手には血塗られた剣が握られていた。


 王が記憶をなくし一か月が経った。


 避難所の中に損壊した無数の死体が転がっており、血だらけの男が死体を貪っていた。


「ペチャ、クチャ…」


 男は一心不乱に死体を貪る。死体から切断した指を奥歯で砕き、骨や爪など尖った部分が口内と喉を大きく傷つけて赤紫色に変色していた。


「げぼぉ、ごぼぉ!!」


 傷ついた喉で血を飲み込むたびに激痛とむせこみが起きるが男は食べるのをやめなかった。


「ぜー、げほぉ、ぐぇ!!」


 胃の中にあった死体の血肉を嘔吐し床を汚した。傍にあった豪華な装飾品も死体を解体するのに使い深紅の赤い血と肉のピンクの塊が付着した。


  記憶を失った王の頭の中には飢えや渇きから逃れるために死体を食べて腹を満たす事だけだった。硬くてかみにくい筋肉だろうが食べている間だけ不安が消えて落ち着く。記憶を失い一人孤独でい続けた結果、王の中には理性や倫理はなく異常で壊れた食欲だけが残されていた。


  もし、何も知らない者がこの避難所の扉を開けてしまえば人食いの怪物と化した王に襲われるがすでに蟻に支配されたこの国でこの鉄の牢獄を開ける者はいなかった。


「たべるもの、もっとほしい」


  死体を解体し尽くして食べれる物がなくなり王は正気の失った目で部屋の中を見る。

  ピンクと深紅が混じった異臭の放っている部屋の中にはすでに食べれる物がない。

  あるとすれば自分の体だけだった。


「たべたい、たべたい、たべたい」


 何度も死体を切って解体したせいで切れ味が悪くなった剣を持ち王は自分の片足に刃を押し込む。大量の血が流れても王は痛みを感じておらず力いっぱいにのこぎりの要領で刃を押して引いてを繰り返して右足を切断した。


「あっはは、たべものだ…」


  大量の血を流しながら王は自らの右足を解体し骨や肉を口に入れていく。

  食欲の怪物と化した王は右足を食べた後にさらに残された左足と左手を切り落とし口にして行った。


  王が閉じ込められて一年が過ぎ蟻達により大陸の統一が完了した頃。

  鉄の牢獄の中には右腕だけを残し全身を汚いピンクと赤色に染めたまま絶命していた王の遺体があった。



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