デパートでの戦闘 1
前半頑張って書いたけど、後半は手抜きです。
「助けに来たよツバキ」
その男子生徒、トオルは不敵な笑顔を浮かべる。
後を付いてきていないことに気がついて、コウも振り返る。
コウはトオルに見覚えがあった。
だが、なかなか思い出せず、どうにかして記憶を辿り、彼に関する情報を探してようやく、教室でツバキのことを3秒おきに見ていた人だということを思い出す。
「ツバキさん、知り合いですか? 」
その問いにツバキは首を横に振る。
「いいえ、知らないわ」
(同じクラスの名前と顔くらいは覚えておきましょうよ……)
知らないと言う言葉を聞いたトオルが、見てとれるほどに動揺していた。
目を大きく見開き、顔色や仕草が焦燥を語り、「そんな……」とつぶやいている。
「どうしてそんなことを言うの? 僕らは付き合ってたじゃないか。この前の休日も2人で出かけたじゃないか」
「そんな関係になった覚えはないわ。そもそも、貴方とは話したこともない」
対人恐怖症の発作のせいだろうか。ツバキは息を整えながら弱々しく言葉を発している。
「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁああ! 僕はこんなにも君を愛しているのに、いつも一緒に居たのに、君のことなら何でも知っているのに、ツバキは僕だけのものなのに……」
荒々しく息をしながら叫んでいたトオルも、やがて呼吸を整え、そうして呟いた。
「あぁ、そうか……その男に無理やり言わされているんだね」
トオルの表情が一瞬だけ変わった。
(今のは怒りの微表情? )
嫌な予感がした。コウの中の警鐘が危険を知らせる。
額の汗が頬をツーっと伝っていくのを感じる。
バクバクと煩い心音。
建物内の人間が殆ど避難したこともあり、周囲の静けさと対比した心音がとても不快だった。
突然、トオルが手のひらをコウに向ける。
「〈流気圧風〉」
(魔術! やばい、こっちも魔術で……)
「エフィンg……」
「遅い」
「ゴフっ! 」
突如、プロボクサーにボディブローを入れられたような衝撃がコウを襲う。
耐えられず、3メートルほど吹っ飛ばされ、クレープ屋の店内へと押し戻されてしまった。
口内に鉄の味が広がる。
内臓が出血したようだ。
(空気を圧縮して飛ばす魔術か……)
「コウっ! 」
ツバキはコウに駆け寄ろうとするが、コウは「来ちゃダメです」と制止する。
(まずは相手の情報を集めなければ)
「〈魔術痕の探知〉」
村瀬 透
魂の価値〈人間〉属性 〈希望〉
性別〈男〉年齢 〈16歳〉
HP 90 MP 210
STR 80 DEX 120
INT 130
スキル
隠密LV2
撮影LV4
魔術
精霊魔術(空気)LV2
(同じクラスに魔術持ちはいなかった。つまり、誰か別の魔術師に魔力を与えられたということになる。そして、さっき使った魔術は空気の精霊魔術……応用次第でかなり強力な魔術だ)
トオルも店内へと足を踏み入れる。
見ると、トオルの周囲にはナイフや包丁などの刃物が10本ほど浮いており、その切先をコウの方へと向けていた。
(空気を操り、物体を浮かせ操るほどには魔術を扱えるということか……)
「死ね」
トオルの言葉を合図に刃物たちが一斉にコウへと発射された。
迫り来る10本の刃。
しかしコウは微動だにしない。
「そっちが殺す気なら仕方ないな……」
(魔術使同士の戦いは手を抜いたら殺される。本気でやらなきゃこっちが死んでしまう)
全ての刃を視界に見据えると……
「〈物質の複製〉」
刃物がコウの体中をズタズタに引き裂くかと思われた瞬間、全ての刃物が砂のようにサラサラと崩れてしまった。
しかし、完璧には破壊しきれていなかった。
コウの頬を一つの破片が傷をつける。
(チッ、1ミリずれたか)
トオルの表情が一瞬停止する。
「何をした? 」
呆気にとられるトオルの質問に対して、首をかしげ「さあね」ととぼけてみせる。
コウが行ったのは、飛んでくる刃物と全く同じ形、同じ大きさ、同じ質量のコピーを、全く同じ座標、同じ高度、同じ角度に精製しただけである。
そうすることによって刃物とコピーは互いの質量によって破壊し合い、粉々に崩れ散る。
それを、たったの一瞬で全ての刃物に対して行ったのである。
そして、ただ破壊しただけではない。
なんとコウの周囲に先ほどのトオルと同じように刃物を浮かせ、攻撃態勢を取っているのである。
コウの扱う〈物質の複製〉は、ただコピーするだけではない。
コピー、破壊、再生、の応用ができる高性能魔術なのだ。
(遠距離魔術は手や指で照準を合わせた方が正確に攻撃できるとお師匠様は言っていた)
するとコウは左目を瞑り、右手で拳銃の形を作り、トオルへと照準を合わす。
まずは一発。
トオルは大きく跳躍しそれを回避する。
続けて二発三発。
トオルはコウを中心に反時計回りに逃げ回る。
そして九発目を打ち終えたところでトオルは店の奥の壁際に追い込まれた。
指をトオルに合わせ、最後の一発を放つ。
その刃がトオルの肩に命中。
「ぐっ……あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛! 」
怯んだ隙を逃さずコウは手に一本のナイフを精製し、接近する。
トドメの一撃をさすためにナイフを伸ばす。
これで終わりかと思った瞬間……
「近寄るなあぁぁあああ! 」
咆哮とともに、コウの体に衝撃が走った。
そう、まるで硬い壁にでもぶつかったかのような。
しかし目の前には何もない。
進もうとしても見えない壁がコウを阻む。
「これは一体……」
長くなりそうなので次回に持ち越し




