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『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


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9/32

第9話 53万です

翌日。


冒険者ギルドは朝から騒がしかった。


原因はもちろん霧島零司である。


薬草採取へ行った新人が、ついでのようにBランク魔物を消滅させた。


しかも無傷。


しかもFランク。


意味が分からない。


「絶対おかしいだろ」


「おかしいな」


「おかしいですね」


本人まで同意していた。


◇◇◇


「討伐報酬です」


ミリアが革袋を差し出す。


零司は受け取った。


中を見る。


予想より重い。


「多くないですか?」


「Bランク討伐報酬です」


「そんなに高いんですか」


「普通は命懸けですから」


なるほど。


零司は納得した。


すると近くの冒険者が苦笑する。


「お前の場合、命懸けじゃなかっただろ」


「そうでしょうか」


「熊が可哀想だった」


周囲が頷いた。


誰も反論しなかった。


◇◇◇


そんな時だった。


ギルドの扉が開く。


三人組の冒険者が入ってきた。


装備は上質。


雰囲気も違う。


実力者だ。


周囲がざわつく。


「あれは……」


「Cランクパーティー《紅狼》か」


「有名人だぞ」


零司は知らなかった。


異世界二日目である。


知るわけがない。


先頭の男が受付へ向かう。


鋭い目付き。


自信に満ちた表情。


そして報告書を見た。


Bランク討伐。


Fランク。


霧島零司。


男は眉をひそめる。


「ミリア」


「はい」


「冗談か?」


「何がです?」


「この報告書だ」


ミリアは頭を抱えた。


また始まった。


昨日から何人目だろう。


「事実です」


「そんなわけがない」


男は即答した。


そして零司を見る。


「お前か」


「はい」


「本当に倒したのか?」


「はい」


「一人で?」


「はい」


男は鼻で笑った。


「面白い」


周囲がざわつく。


嫌な空気だった。


◇◇◇


男の名はレオルド。


Cランク冒険者。


若くして成功した実力者である。


それゆえに。


プライドも高かった。


「新人」


「はい」


「魔力はいくつだ」


「3です」


ギルド内が静まり返る。


レオルドは笑った。


「3?」


「はい」


「3でBランク討伐?」


「はい」


「信じろと?」


「事実ですので」


レオルドは舌打ちした。


気に入らない。


非常に気に入らない。


何か裏がある。


そう思った。


◇◇◇


「なら試そう」


レオルドは懐から小さな魔道具を取り出した。


水晶球だった。


「これは?」


零司が聞く。


「戦闘能力測定器だ」


周囲がざわつく。


高価な品だ。


王都製。


普通の冒険者では持てない。


「面白そうですね」


零司は素直に言った。


レオルドは鼻を鳴らす。


「触れろ」


零司は従った。


水晶球に手を置く。


何も起きない。


しばらく待つ。


やがてレオルドが眉をひそめた。


「故障か?」


「壊れているんですか?」


「そんなはずは――」


その時。


零司が口を開いた。


「53万です」


沈黙。


ギルドが静まり返る。


レオルドも固まった。


ミリアも固まった。


ガンズも固まった。


全員が固まった。


「……は?」


レオルドが聞き返す。


「53万です」


零司はもう一度言った。


真顔だった。


「何が?」


「戦闘能力です」


「測定されてないだろ!」


ギルド中からツッコミが飛んだ。


零司は首を傾げる。


「そうなんですか?」


「そうなんですかじゃねぇ!」


ガンズが叫ぶ。


「どこから出てきた数字だ!」


「なんとなくです」


「なんとなくで53万が出る奴いるか!」


大爆笑が起きた。


久しぶりだった。


零司が笑われるのは。


ただし以前と違う。


馬鹿にする笑いではない。


呆れる笑いだった。


◇◇◇


レオルドだけは笑っていなかった。


気に入らない。


何もかも。


この男はおかしい。


だからこそ。


力ずくで確かめたくなった。


「新人」


「はい」


「訓練場へ来い」


空気が変わる。


周囲の冒険者たちが顔をしかめる。


レオルドは本気だ。


「模擬戦だ」


「模擬戦?」


「逃げるか?」


挑発だった。


零司は少し考える。


冒険者なら戦いも経験した方が良いかもしれない。


「分かりました」


あっさり了承した。


その瞬間。


ガンズが頭を抱えた。


「終わった……」


「どっちがだ?」


「レオルドが」


即答だった。


◇◇◇


訓練場。


人が集まる。


見物人も増える。


レオルドは剣を抜いた。


愛用の魔剣だ。


対する零司。


素手。


いつも通り。


「ルールは簡単だ」


レオルドが言う。


「降参するか、戦闘不能で負け」


「分かりました」


「本気で来い」


「善処します」


「善処するな!」


誰かが叫んだ。


周囲が頷く。


本当にその通りだった。


◇◇◇


開始の合図。


レオルドが動く。


速い。


さすがCランク。


一瞬で間合いを詰めた。


「終わりだ!」


剣が振り下ろされる。


そして。


零司は軽く指を向けた。


レオルドの顔が青ざめる。


ロイドの顔がさらに青ざめる。


ガンズは叫んだ。


「やめろぉぉぉ!!」


次の瞬間。


零司はため息混じりに言った。


「おやおや」


そして。


少しだけ困ったように続けた。


「今のは少し危なかったですよ」


黒い光が走る。


狙われたのはレオルドではない。


剣だった。


魔剣が音もなく消滅する。


柄だけを残して。


沈黙。


レオルドが固まる。


自分の手を見る。


剣を見る。


消えている。


完全に。


綺麗に。


「……え?」


その一言だけだった。


零司は首を傾げる。


「続けますか?」


レオルドは即座に首を横に振った。


人生最速だった。


ギルド中が爆笑した。


そしてその日。


Cランク冒険者レオルドに、


『魔剣ごと心を折られた男』


という新しいあだ名が付いたのだった。

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