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『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


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第81話 古代兵器アーク・ゼロ

【対象確認】


【デスビーム保持者】


【排除開始】


無機質な機械音声が禁域全体へ響き渡った。


同時に、黒い巨人の両眼が深紅に染まる。


その魔力は今まで戦ってきたどんな魔物とも違う。


殺気ではない。


怒りでもない。


ただ命令を遂行するためだけに存在する兵器。


「全員、散れ!」


ガルドの怒号が響く。


その瞬間、黒い巨人の右腕がゆっくりと持ち上がった。


遅い。


誰もがそう思った。


しかし次の瞬間には、拳が零司の目の前まで迫っていた。


「速っ!」


ボルグが叫ぶ。


轟ッ!!


零司が飛び退いた直後、大地が爆発する。


地面が数十メートルに渡って陥没し、衝撃だけで周囲の木々が吹き飛んだ。


「こんな威力……!」


セリナの顔色が変わる。


あの一撃をまともに受ければ、人間など跡形も残らない。


ガルドが一気に間合いを詰めた。


「こっちだ!」


渾身の斬撃。


王国最強騎士の一太刀が黒い装甲へ叩き込まれる。


ギィィィン!!


金属音が響いた。


だが。


「傷が……ない。」


剣は確かに命中した。


しかし装甲には白い線一本すら残らない。


ガルドは目を見開いた。


「馬鹿な。」


その隙だった。


黒い巨人が左腕を振るう。


ガルドは咄嗟に剣で受けた。


ズドォォォォン!!


身体が砲弾のように吹き飛ぶ。


木を一本。


二本。


三本。


立て続けになぎ倒し、ようやく止まった。


「ガルド!」


零司が駆け寄ろうとする。


しかしルシアが叫んだ。


「行っちゃ駄目だ!」


「え?」


「狙いは君だけだ!」


その言葉通りだった。


黒い巨人はガルドへ見向きもしない。


真っ直ぐ零司だけを見ている。


赤い瞳が冷たく光る。


【対象固定】


【優先排除】


「完全に俺を無視してやがる……。」


ボルグが盾を構えながら苦笑する。


「舐められたもんだ。」


「違う。」


ルシアは首を横へ振る。


「あれは最初からそういう兵器なんだ。」


「デスビームだけを排除するために造られた。」


「だから他の相手は後回し。」


セリナが魔法陣を展開する。


「だったら動きを止めます!」


巨大な氷柱が地面から突き上がる。


上級拘束魔法。


普通の魔物なら一瞬で凍り付く。


しかし。


黒い巨人は止まらない。


氷を紙のように砕き、そのまま歩き続ける。


「魔法まで効かない!?」


「正確には。」


ルシアは苦しそうに答えた。


「あらゆる攻撃へ適応する。」


「適応?」


「アストリア最高傑作。」


「あれは戦えば戦うほど強くなる。」


全員の顔色が変わった。


つまり長引けば長引くほど不利になる。


零司は黒い巨人を見つめた。


「名前はあるんですか?」


「ある。」


ルシアは静かに答える。


「アーク・ゼロ。」


「世界最後の守護兵器。」


その瞬間だった。


アーク・ゼロが右腕を零司へ向ける。


装甲が展開し、内部から漆黒の砲身が現れる。


「まさか!」


ルシアの表情が凍る。


「そんなはずは……!」


【解析完了】


【能力再現開始】


黒い砲身へ赤い光が集まり始める。


零司は思わず息を呑んだ。


「……あれ。」


「俺のデスビーム?」


「違う!」


ルシアが叫ぶ。


「コピーだ!」


「避けろ!」


次の瞬間。


漆黒の光線が一直線に放たれた。


ズォォォォォン!!


光は山を貫き。


森を消し。


雲まで切り裂きながら遥か彼方へ消えていく。


誰も動けなかった。


デスビームほど細くはない。


威力も劣る。


しかし。


「真似した……。」


零司は呆然と呟く。


ルシアは歯を食いしばる。


「最悪だ。」


「解析能力まで起動した。」


「このままじゃ。」


ルシアは零司を見る。


「君の戦い方を全て学習する。」


ガルドが立ち上がる。


口元から血を流しながら、それでも剣を構えた。


「つまり。」


「長引けば勝てなくなる。」


「その通り。」


ガルドは笑った。


「なら簡単だ。」


剣を肩へ担ぎ、零司へ振り返る。


「零司。」


「一撃で終わらせろ。」


「でも!」


「迷うな。」


ガルドの目は真っ直ぐだった。


「今までお前は加減してきた。」


「死なせたくない。」


「壊したくない。」


「そんな甘さで戦ってきた。」


「だが。」


ガルドはアーク・ゼロを睨み付ける。


「こいつだけは違う。」


「止めなければ世界が終わる。」


零司は拳を握る。


指先を見る。


何度も助けられてきた力。


だが同時に、恐れてきた力でもあった。


ルシアが静かに言う。


「黒崎零司。」


「君が選ぶんだ。」


「この力を恐れ続けるのか。」


「それとも。」


「自分の力として受け入れるのか。」


アーク・ゼロの砲身が再び赤く輝き始める。


【排除実行】


【デスビーム発射まで】


【3】


【2】


零司はゆっくりと右手を前へ突き出した。


そして、小さく息を吸う。


「……分かった。」


その瞳から迷いが消えた。

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