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『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


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第77話 管理者の依頼

試練の塔が完全に消滅すると、森は驚くほど静かになった。


あれほど世界を揺らしていた魔力も、今では跡形もない。


まるで最初から塔など存在しなかったかのようだった。


しかし、その静寂は長くは続かなかった。


空中に浮かぶ管理者会議の水晶が再び強い光を放ち、アークの姿が映し出される。


先ほどまでとは違う。


一万三千年の重荷から解放されたような表情ではあるが、その目には管理者としての鋭さが戻っていた。


『黒崎零司。』


「はい。」


『まずは礼を言う。』


アークは深く頭を下げた。


その姿にガルドたちは目を丸くする。


管理者が一人の人間へ頭を下げる。


普通ではあり得ない光景だった。


『試練の塔を終わらせてくれたこと、感謝する。』


『あの塔は長い間、管理者でも手を出せない存在だった。』


『お前のおかげで、一つの時代に区切りを付けることができた。』


零司は少し困ったように笑う。


「僕は何もしてませんよ。」


『その台詞はもう聞き飽きた。』


アークは苦笑する。


『本人に自覚がないのも含めて、お前らしいがな。』


管理者会議から小さな笑い声が漏れた。


ようやく張り詰めていた空気が和らぐ。


だが、アークはすぐに表情を引き締めた。


『本題に入る。』


その一言で全員の表情が変わる。


『試練は終わった。』


『だが、お前には新しい役目を頼みたい。』


「役目……ですか?」


『そうだ。』


アークは空中へ一枚の古い地図を映し出した。


そこには世界地図が描かれている。


王国。


帝国。


魔族領。


海。


そして世界の北端。


誰の領土にも属していない黒い空白地帯が存在していた。


ガルドが眉をひそめる。


「ここは……。」


『禁域。』


アークが答える。


『人類も魔族も近付かない場所だ。』


『正確には、近付けない場所と言った方がいい。』


地図の黒い場所が赤く点滅する。


管理者たちの表情も険しい。


『塔が消滅した直後、この場所で異常な魔力を観測した。』


『しかも、その魔力は塔の崩壊と完全に同期している。』


零司は静かに地図を見つめる。


「何があるんです?」


アークは少しだけ言葉を選んだ。


そして低い声で告げる。


『分からん。』


『だから困っている。』


管理者が分からない。


その事実だけで異常さが伝わってくる。


老人が前へ出た。


『塔が崩壊したことで何かの封印が解けたのか、それとも別の遺産が起動したのか……現時点では判断できない。』


『ただ一つ確かなことがある。』


老人の指が黒い空白地帯を指す。


『あそこには、今まで存在しなかった反応がある。』


セリナが小さく呟く。


「新しい遺跡……?」


『違う。』


老人は首を横へ振った。


『生命反応じゃ。』


森が静まり返る。


ガルドが低い声で尋ねる。


「人間か?」


『分からん。』


「魔族か?」


『それも分からん。』


「魔物か?」


『それも違う。』


答えが返ってこない。


管理者たちにも正体が掴めないのだ。


アークは大きく息を吐いた。


『そこで零司。』


『お前に調査を依頼したい。』


「僕がですか?」


『ああ。』


『戦えという意味ではない。』


『何が起きているのかを確かめてほしい。』


零司は少し考えた。


危険かもしれない。


何が待っているかも分からない。


だが、試練の塔で出会ったフレージの言葉が脳裏をよぎる。


――これから先を歩くのは貴方です。


零司はゆっくり頷いた。


「分かりました。」


「行ってみます。」


その返事を聞いたアークは安心したように笑う。


『ありがとう。』


『もちろん一人では行かせん。』


ガルドが腕を組みながら笑った。


「最初からそのつもりだ。」


ボルグも豪快に笑う。


「面白そうじゃねぇか。」


セリナも静かに頷く。


「私も同行します。」


少女は肩をすくめた。


「結局、巻き込まれるんだよね。」


誰も否定しなかった。


こうして新たな目的地が決まる。


試練の塔は終わった。


しかし、その終焉は新たな物語の始まりに過ぎなかった。


その頃――。


世界の北端。


誰も踏み入れたことのない黒い大地。


そこに立つ一人の人影が、ゆっくりと目を開く。


「……長かった。」


掠れた声が風に溶ける。


その人物は、空を見上げながら静かに微笑んだ。


「ようやく、目覚めたか。」


その視線の先には、試練の塔が消えた方角があった。

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