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『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


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第76話 崩壊する試練の塔

「先に言えぇぇぇ!!」


ガルドの叫びが塔中へ響き渡る。


その直後だった。


轟音と共に天井の一部が崩れ落ちる。


直径数メートルはある岩塊が一直線に零司たちへ降ってきた。


「散れ!」


ガルドが叫ぶより早く、全員が飛び退く。


岩は床へ激突し、大理石を粉々に砕いた。


神殿全体が大きく揺れる。


壁には無数の亀裂が走り、古代文字は次々と光を失っていく。


偽零司はどこか名残惜しそうに周囲を見渡していた。


「とうとう終わりですか。」


その横顔には、先ほどまでの軽い調子はなかった。


数千年、あるいは数万年。


この塔を守り続けてきた者だけが浮かべられる穏やかな表情だった。


「急がなくていいのか!」


ボルグが怒鳴る。


「もちろん急いでください。」


「お前も来い!」


偽零司は静かに首を横へ振った。


「私は試練の塔そのものです。」


その一言で全員が言葉を失った。


「塔が消えれば、私も消えます。」


淡々とした口調だった。


死を恐れている様子はない。


ただ、役目を終えるだけ。


それだけだった。


セリナが小さく尋ねる。


「……怖くないんですか。」


偽零司は少し考え、優しく笑った。


「役目を果たせた者に、未練はありません。」


その笑顔は、どこか先ほど消えていった老人と重なって見えた。


零司は静かに前へ出る。


「ありがとうございました。」


偽零司は驚いたように目を丸くする。


「お礼を言われるようなことはしていませんよ。」


「そんなことありません。」


零司は笑う。


「あなたがいたから、僕は自分が誰なのか分かった。」


「僕は僕だって、自信を持てました。」


偽零司はしばらく黙っていた。


やがて、小さく笑う。


「……その言葉だけで十分です。」


その瞬間だった。


ゴゴゴゴゴゴッ!!


今までとは比べものにならない揺れが塔を襲う。


床が大きく傾き、神殿の柱が一本、轟音と共に崩れ落ちた。


「もう限界です。」


偽零司が静かに言う。


「出口は一直線。」


神殿の奥に、黄金色の転移門が現れる。


「あそこへ飛び込めば外へ出られます。」


「みんな行くぞ!」


ガルドを先頭に一斉に駆け出す。


瓦礫が降る。


床が崩れる。


天井が裂ける。


神話の遺産は、その役目を終えようとしていた。


走りながらボルグが叫ぶ。


「零司! 早く!」


しかし零司だけは立ち止まっていた。


振り返る。


偽零司は神殿の中央で静かに立っていた。


誰もいない空間へ向かって、一礼している。


まるで、もう一人の誰かへ別れを告げるように。


「……フレージ様。」


その小さな呟きは誰にも届かなかった。


偽零司はゆっくりと顔を上げる。


そして零司へ向かって笑った。


「最後に一つだけ。」


「はい。」


「夢は、たまに見るくらいが丁度いいですよ。」


零司も笑う。


「そうします。」


「それでは。」


偽零司は深々と頭を下げた。


「良い旅を、黒崎零司さん。」


零司も一礼し、仲間たちの元へ駆け出した。


全員が転移門へ飛び込んだ、その瞬間。


轟ォォォォン!!


試練の塔全体が眩い光に包まれる。


空へ向かって一本の光の柱が立ち上り、雲を突き抜け、世界中から見えるほどの輝きを放った。


管理者会議でも、その光景を誰もが静かに見つめていた。


アークが小さく呟く。


『終わったな……。』


老人は静かに頷く。


『一つの時代が終わった。』


誰も拍手はしない。


誰も騒がない。


ただ静かに、長い長い役目を終えた塔へ敬意を払っていた。


その頃。


転移門を抜けた零司たちは森へ戻っていた。


背後では試練の塔が粒子となって空へ溶けていく。


巨大だった塔は跡形もなく消え去り、そこには青い空だけが残っていた。


誰も言葉を発しない。


しばらくその景色を見つめた後、零司は静かに笑った。


「終わったんですね。」


ガルドも頷く。


「ああ。」


「……終わった。」


しかし、その時だった。


管理者会議の水晶が再び激しく光り始める。


アークが険しい表情でこちらを見ていた。


『黒崎零司。』


その声には、先ほどまでの安堵はなかった。


『休むのは後だ。』


『お前に、どうしても伝えなければならないことがある。』


その一言で、場の空気が再び張り詰める。


試練は終わった。


だが、本当の物語はまだ終わっていなかった。

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