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『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


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第73話 最強を超える者

零司の意識が戻ると、目の前には見覚えのある草原が広がっていた。


試練の塔。


第一試練。


別空間へ送られていた時間は長く感じたが、実際にはほんの数秒しか経っていなかったらしい。


「零司!」


セリナが駆け寄る。


「大丈夫ですか?」


「うん。少し話をしていただけだから。」


「話?」


「不思議な人だったよ。」


零司はそれ以上語らなかった。


語る必要がない気がした。


もう二度と会うことはない。


だからこそ、胸の奥だけにしまっておけばいい。


その様子を見ていた偽零司は、小さく目を細めた。


「……なるほど。」


先ほどまでの余裕が少しだけ消えている。


「会われたのですね。」


「誰に?」


「いいえ。」


偽零司は首を横へ振る。


「こちらの話です。」


そして、軽く手を叩いた。


その瞬間、草原の中央に立っていた白銀の巨人がゆっくりと動き始める。


全長二十メートルを超える巨体。


一歩踏み出すだけで大地が揺れる。


ガルドたちはすぐに武器を構えたが、偽零司が静かに制した。


「安心してください。試練はまだ始まっていません。」


「始まってない?」


ガルドが眉をひそめる。


「では、この巨人は何だ。」


「試験官です。」


「お前じゃないのか。」


「私は受付係です。」


あっさり言われた。


全員が思った。


最初からそう言ってほしかった、と。


偽零司は苦笑しながら続ける。


「この試練は、多くの挑戦者が勘違いします。」


白銀の巨人がゆっくりと剣を持ち上げる。


凄まじい威圧感だった。


普通なら誰もが戦おうと考える。


だが。


「戦っても勝てません。」


「……やっぱりか。」


ガルドは予想していた。


「歴代の挑戦者は皆、力で突破しようとしました。しかし、一人として成功していません。」


「では、どうすればいい。」


偽零司は静かに笑う。


「試練の名前を思い出してください。」


空中へ金色の文字が浮かぶ。


【最強を超えよ】


ガルドはその文字を見つめる。


超えろ。


倒せ、ではない。


その違いが引っ掛かっていた。


すると、それまで黙っていた零司がぽつりと呟いた。


「比べられているのは、強さじゃない。」


全員の視線が零司へ集まる。


「最強を超えるって、戦闘力を超えることじゃない気がする。」


偽零司の口元がわずかに緩んだ。


「続けてください。」


「最強の人なら、きっと力で解決しようとする。でも、それを超えるなら……。」


零司は白銀の巨人を見上げる。


巨人は剣を構えたまま、一歩も動いていない。


攻撃する様子もない。


「戦わないこと。」


その一言だった。


偽零司が拍手を送る。


「正解です。」


その瞬間。


白銀の巨人が剣を下ろした。


敵意が消える。


鎧が光となって崩れ始める。


ガルドたちは目を見開いた。


「終わった……?」


「はい。」


偽零司は満足そうに頷く。


「第一試練は、『力に頼らない者』を選ぶ試練です。」


「最強を超える者とは、最強と同じことをしない者。」


「だから戦った時点で失格だったのです。」


草原全体が黄金色の光に包まれる。


空中に新たな文字が浮かび上がった。


【第一試練 突破】


ガルドは思わず笑った。


「こんな試練があるとはな。」


ボルグも豪快に笑う。


「剣を抜いた時点で負けだったとは。」


セリナは零司を見る。


「零司さんがいなければ、絶対に気付けませんでした。」


零司は照れくさそうに頭を掻いた。


「たまたまだよ。」


その時だった。


偽零司の表情が少しだけ真剣になる。


「ですが。」


その一言で空気が変わる。


「ここからが本番です。」


地面がゆっくりと揺れ始める。


草原が消えていく。


空が砕ける。


世界そのものが組み替えられていく。


偽零司は静かに頭を下げた。


「第一試練突破、おめでとうございます。」


「次は第二試練。」


「知恵の間。」


その言葉と共に、全員の視界が白く染まる。


誰も知らなかった。


第二試練には、管理者たちですら最後まで攻略できなかった”問い”が待ち受けていることを。

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