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『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


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第72話 夢の続きを

真っ白な空間だった。


空もない。


地面もない。


果てすら見えない純白の世界。


零司は静かに周囲を見渡した。


気配は一つだけ。


自分の正面。


豪華な玉座へ腰掛ける白い装甲の男。


夢の中で何度も見た姿。


紫色の空の下で星を滅ぼし、戦闘力五十三万と名乗り、穏やかな笑顔で世界を終わらせた存在。


フレージ。


零司はゆっくり歩み寄った。


男も穏やかに笑っている。


敵意は感じられない。


それどころか、旧友を迎えるような柔らかい空気さえあった。


「ようこそ、黒崎零司さん。」


「あなたが……フレージ。」


「ええ。」


男は立ち上がることもなく優雅に頷く。


「正確には違いますが。」


「違う?」


「私は本人ではありません。」


どこか懐かしそうに目を細める。


「残された記録。残響。人格の欠片。そのようなものだと思ってください。」


零司は少し安心した。


本人ではない。


それなら話くらいはできそうだ。


「聞きたいことがあります。」


「どうぞ。」


「僕はあなたなんですか?」


一番聞きたかったことだった。


管理者は違うと言う。


しかし完全に違うとも言い切れない。


少女も老人も、皆どこか歯切れが悪かった。


だから本人……いや、本人に最も近い存在へ聞くしかない。


フレージは静かに笑った。


「違います。」


即答だった。


零司は目を瞬かせる。


「あっさりですね。」


「ええ。」


フレージは紅茶を一口飲む。


いつの間に用意したのか分からない。


だが誰も気にしない。


そんな雰囲気があった。


「私は私です。」


「貴方は貴方です。」


「魂も。」


「人格も。」


「歩んできた人生も。」


「全て別。」


そこまでは管理者たちの話と同じだった。


だが。


フレージは少しだけ視線を遠くへ向ける。


「ただ。」


その一言で空気が変わる。


「私の記録は貴方の中に眠っています。」


「記録?」


「知識。」


「経験。」


「戦い方。」


「考え方。」


「数え切れないほどの時間。」


零司は自分の胸へ手を当てた。


「じゃあ、夢は。」


「その欠片です。」


やはりそうだった。


夢ではない。


記録だったのだ。


「でも。」


零司は首を傾げる。


「夢の中のあなたは、星を壊したりしてましたよね。」


「ああ。」


フレージは少し考える。


そして苦笑した。


「若気の至りです。」


沈黙。


零司は聞き返した。


「若気の至り?」


「ええ。」


「星を消したのが?」


「はい。」


「世界を壊したのも?」


「はい。」


「全部?」


「全部です。」


あまりにも堂々としていた。


零司は思った。


反省しているのか、この人。


微妙だった。


その時だった。


フレージがふと笑みを深くする。


「一つだけ教えて差し上げましょう。」


「何ですか?」


「管理者たちは勘違いしています。」


零司は耳を傾ける。


「彼らは私が目覚めることを恐れている。」


「はい。」


「ですが。」


フレージは首を横へ振った。


「私はもう目覚めません。」


零司は驚いた。


「どうして?」


フレージは自分の胸へ手を当てる。


「役目を終えましたから。」


その言葉はどこか寂しそうだった。


「だから。」


穏やかに微笑む。


「これから先を歩くのは貴方です。」


その瞬間。


白い世界へヒビが走る。


パリン、とガラスが割れるような音。


フレージは空を見上げ、小さく笑った。


「時間切れのようですね。」


「また会えますか?」


零司は自然と尋ねていた。


フレージは少しだけ考える。


そして優しく答えた。


「いいえ。」


「今日で最後です。」


世界がさらに崩れ始める。


玉座も。


床も。


空間そのものが光へ変わっていく。


消える直前。


フレージは最後に小さく笑った。


「黒崎零司さん。」


「はい。」


「夢くらいは、もう少し格好良く見てください。」


零司が思わず笑う。


「努力します。」


「それは楽しみです。」


その言葉を最後に。


白い世界は静かに光へ溶けた。


次の瞬間、零司の意識は再び試練の塔へと引き戻される。


だが彼はまだ知らない。


ガルドたちが第一試練の攻略法を見つけ、試練そのものが大きく動き始めていることを。

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