第71話 第一試練の本質
「こちらは私が再現したフレージ様の映像です」
偽零司が胸を張る。
管理者会議は大混乱だった。
「消せ!」
「今すぐ消せ!」
「トラウマを刺激するな!」
アークなど頭を抱えたまま床を転げ回っている。
一方、零司たちは映像を見上げて首を傾げていた。
「何も動きませんね」
「映像ですから」
「じゃあ何のために?」
「格好いいでしょう?」
「……」
「……」
「……」
誰一人として賛同しなかった。
偽零司は少しだけ肩を落とした。
「不評でしたか」
「当たり前だ!」
アークの怒鳴り声が響く。
「それより試練を始めろ!」
「失礼しました。」
偽零司が指を鳴らすと、玉座の映像は霧のように消え去った。同時に草原全体を覆っていた魔法陣が輝きを増し、空に新たな文字が浮かび上がる。
【第一試練 開始】
【最強を超えよ】
その直後だった。
零司の身体が淡い光に包まれる。
「え?」
次の瞬間、彼の姿が消えた。
「零司!」
ガルドが叫ぶ。
偽零司は穏やかに説明する。
「ご安心ください。試験官は別空間へ移動しました。」
「つまり?」
「皆さんが戦う相手は黒崎零司ではありません。」
全員が安堵した。
ようやくまともな試験になった。
しかし、その安心は一瞬で終わる。
草原の中央から巨大な魔力が噴き上がった。
大地が割れ、光の柱が天へ伸びる。
その中から現れたのは、一体の巨人だった。
全長二十メートルはある純白の鎧騎士。
手には巨大な剣。
盾には「試練」の古代文字が刻まれている。
「試練の守護者です。」
偽零司は静かに告げる。
「この守護者は、挑戦者の実力に合わせて強さが変化します。」
ガルドは剣を抜いた。
「なら、倒せばいいだけだな。」
「ええ。」
偽零司は頷く。
「ですが、一つだけ忠告があります。」
「何だ?」
「力で勝とうとした者は、一人も突破できませんでした。」
その言葉に全員の表情が変わる。
ガルドは剣を下ろした。
「……そういう試験か。」
零司がいない今、冷静に考えられる。
試練の名は「最強を超えよ」。
最強を倒せ、ではない。
超えろ、なのだ。
セリナが小さく呟く。
「もしかして……勝つ必要はない?」
偽零司が初めて満足そうに笑った。
「さすが、その発想に辿り着きましたか。」
ガルドたちは互いに顔を見合わせる。
この試練は戦闘試験ではない。
最強を相手に、どうすれば先へ進めるのか。
その答えを見つける試験だった。
その頃、別空間では――。
零司が真っ白な空間に一人立っていた。
「ここは……?」
返事はない。
静寂だけが続く。
だが、背後からゆっくりと拍手が聞こえた。
パン。
パン。
パン。
零司が振り返る。
そこには白い装甲の男が玉座に腰掛け、穏やかな笑みを浮かべていた。
「ようこそ。」
その声は、夢の中で何度も聞いた声だった。
「黒崎零司さん。」




