第67話 被害者の会、結成
『もう帰りたい』
アークの呟きは切実だった。
本当に切実だった。
一万三千年追い続けた宿敵に再会した。
感動の再会になるはずだった。
因縁の決着になるはずだった。
なのに。
薬草扱いされた。
心が折れても仕方がない。
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管理者会議の面々は深く頷いていた。
「あの気持ちは分かる」
「私も帰りたい」
「昔からああだった」
「むしろ今日は軽傷」
酷い会話だった。
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アークはゆっくり顔を上げる。
黄金の瞳。
その奥には決意が宿っていた。
『だが』
重い声。
『私は逃げない』
管理者たちがざわつく。
少女が嫌そうな顔をする。
ガルドたちも嫌な予感しかしない。
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『私は管理者だ』
空間が震える。
『秩序を守る者だ』
さらに震える。
『例え相手がフレージでも』
その瞬間。
会議室の端から声が飛んだ。
「いや逃げろよ」
全員が頷いた。
アークだけが頷かなかった。
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『静かにしろ!!』
怒鳴る。
そして。
再び零司を見る。
『黒崎零司』
「はい」
『貴様が本当にフレージでないなら』
「違います」
『最後まで聞け!!』
初めて零司にツッコミを入れた。
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少女が吹き出した。
「成長したね」
『してない!!』
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アークは咳払いする。
そして。
真面目な顔になった。
『証明してもらう』
「証明?」
『そうだ』
巨大な魔法陣が空に浮かぶ。
管理者たちが騒ぐ。
少女も顔色を変えた。
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「ちょっと待て」
「おいアーク」
「それは駄目だ」
「本気か?」
誰も賛成していない。
だがアークは止まらなかった。
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『試練の塔』
その言葉が響く。
ガルドたちは意味が分からない。
しかし。
管理者たちは全員青ざめていた。
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老人が立ち上がる。
『やめなさい』
『断る』
『死人が出る』
『だからだ』
『世界が壊れる』
『いつものことだ』
会話が物騒だった。
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零司が手を挙げる。
「質問いいですか?」
『何だ』
「試練の塔って何です?」
アークは答える。
『真実を映す場所だ』
その瞬間。
少女が頭を抱えた。
「最悪」
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『塔の中では』
アークが続ける。
『偽りは通用しない』
『記憶も』
『魂も』
『本質も』
『全て暴かれる』
森が静まり返る。
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零司は少し考えた。
そして。
「つまり健康診断みたいなものですか?」
違った。
絶対違った。
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管理者たちが一斉に吹き出す。
アークは額を押さえた。
頭痛がしてきたらしい。
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『とにかくだ』
『塔を攻略しろ』
『そこでフレージでないと証明できれば』
『我々は手を引く』
ガルドたちが驚く。
かなり好条件だった。
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しかし。
少女は怪訝な顔をしている。
何かがおかしい。
そんな顔だった。
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「条件は?」
少女が聞く。
アークが沈黙する。
数秒。
十秒。
二十秒。
嫌な予感しかしない。
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『もしフレージだった場合』
全員が息を呑む。
『私が全力で逃げる』
森が静まり返った。
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「待て」
ガルドが言う。
「待て待て待て」
理解できない。
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『何だ』
「封印じゃないのか?」
『無理だ』
即答だった。
『討伐じゃないのか?』
『無理だ』
即答だった。
『戦わないのか?』
『死にたいのか?』
即答だった。
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管理者会議が拍手に包まれる。
「正しい判断だ」
「成長したな」
「立派になった」
アークは褒められていた。
なぜだろう。
全く格好良くない。
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しかし。
少女だけは笑わなかった。
むしろ真面目だった。
「アーク」
『何だ』
「試練の塔」
『ああ』
「本当にまだ残ってたんだ」
その声には驚きがあった。
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アークは頷く。
『最後の一本だ』
少女の顔色が変わる。
今までで一番。
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『フレージが壊し損ねた』
沈黙。
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零司が首を傾げる。
「壊し損ねた?」
アークは遠い目をした。
『昔な』
『全部壊した』
『試練の塔を』
『百七十三本』
ガルドたちが絶句する。
試験会場を壊す受験生がいるだろうか。
普通。
いない。
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『最後の一本だけ残った』
『だから今回使う』
アークはそう言い切った。
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その瞬間。
空の向こうに巨大な塔が現れる。
雲を突き抜けるほど高い。
天まで届くほど巨大な塔。
古代文字が刻まれた白亜の建造物。
神話の遺跡そのものだった。
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そして。
塔の最上階。
誰もいないはずの窓に。
白い装甲の人影が一瞬映る。
玉座に座り。
優雅に微笑む。
まるで。
塔の主であるかのように。
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少女が小さく呟く。
「……あ」
嫌な予感しかしない声だった。




