第63話 管理者会議、再び
無数の視線。
それが空の裂け目の向こうから降り注いでいた。
百。
千。
万。
数えることすら意味がない。
世界の外側。
人間が本来立ち入ることのできない領域。
そこから何かがこちらを見ている。
騎士たちは動けなかった。
セリナも青ざめている。
ボルグは無意識に盾を握り締めた。
ガルドでさえ冷や汗を流している。
しかし。
零司だけは違った。
「鳥ですか?」
少女が頭を抱えた。
「何でそうなるの」
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空間の裂け目がさらに広がる。
そして。
その向こう側が見えた。
巨大な会議室だった。
信じられないほど巨大な。
山ほどの大きさを持つ円卓。
その周囲に座る無数の存在。
老人。
女性。
獣人。
竜。
機械。
光の塊。
姿は様々だった。
だが共通していることが一つある。
全員。
とんでもなく強い。
ガルドは理解した。
一人一人が神話級だ。
この世界なら一国を滅ぼせる。
そんな存在ばかりだった。
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そして。
その全員が。
零司を見た瞬間。
顔色を変えた。
会議室の一角で誰かが椅子から落ちた。
別の誰かは資料をぶちまけた。
さらに別の誰かは失神した。
会議室が大混乱になる。
「いたぞ!!」
「本当にいた!!」
「封印解けてるじゃないか!!」
「誰だ確認作業した奴!!」
「私は反対したぞ!!」
「議事録を持ってこい!!」
収拾がつかない。
まるで職場の大事故だった。
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少女はため息を吐いた。
「相変わらずだなあ」
「知り合いですか?」
「元上司」
「大変そうですね」
「すごく」
即答だった。
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その時。
会議室の中央に座る老人が立ち上がった。
白い髭。
白い法衣。
神々しい雰囲気。
明らかに偉い。
すると周囲の管理者たちが静かになる。
議長らしい。
老人は零司を見た。
数秒。
沈黙。
そして。
深々と頭を下げた。
森が静まり返る。
ガルドたちが固まる。
騎士たちも固まる。
巨人まで固まる。
誰も予想していなかった。
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「申し訳ございませんでした」
老人が謝罪した。
零司が首を傾げる。
「何がです?」
「色々です」
「?」
「本当に色々です」
凄く重みのある言葉だった。
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すると会議室の奥から怒声が飛ぶ。
「謝るな!!」
「刺激するな!!」
「余計なこと言うな!!」
「前回それで銀河が消えたんだぞ!!」
老人が振り返る。
「黙りなさい」
即座に全員静かになった。
だが。
何人かは泣いていた。
トラウマらしい。
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老人は再び零司を見る。
慎重だった。
爆弾処理をするような慎重さだった。
「確認したいことがあります」
「はい」
「今の貴方は黒崎零司ですか?」
「そうです」
「フレージではなく?」
「違います」
老人は少し安心した。
本当に少しだけ。
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しかし。
次の瞬間。
零司が言った。
「でも最近」
老人の笑顔が凍る。
会議室全体も凍る。
少女だけがニヤニヤしている。
「夢で変な人を見るんですよね」
完全にアウトだった。
会議室の誰かが悲鳴を上げた。
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「ど、どんな夢ですか?」
老人が震える声で聞く。
零司は少し考える。
「宇宙でお茶飲んでました」
会議室が爆発した。
「終わったぁぁぁぁ!!」
「思い出してるじゃないか!!」
「だから言ったんだ!!」
「退職届を返せぇぇ!!」
阿鼻叫喚だった。
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少女は大笑いしている。
巨人は頭を抱えている。
ガルドたちは何も理解できない。
ただ一つだけ分かる。
零司の過去は。
どうやらとんでもなく迷惑だった。
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その時だった。
会議室の隅にいた一人の管理者が立ち上がる。
若い男だった。
そして。
零司を見る。
真っ直ぐに。
憎しみを込めて。
「もう限界だ」
会議室が静まる。
老人の顔色が変わる。
少女も笑うのをやめた。
嫌な予感がした。
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男は叫ぶ。
「何千年逃げ続ければいい!!」
誰も止めない。
止められない。
積もり積もった感情だった。
「封印も失敗!」
「討伐も失敗!」
「説得も失敗!」
「会議室は吹き飛ぶ!」
「休暇も吹き飛ぶ!」
「退職届まで吹き飛ばされたんだぞ!!」
もはや私怨だった。
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そして男は指を突きつける。
零司へ。
「今度こそ終わらせる!!」
その瞬間。
老人が叫んだ。
「やめろ!!」
少女も叫ぶ。
「それ駄目!!」
しかし。
遅かった。
男の身体が光に包まれる。
世界を越える転移術。
管理者最強クラスだけが使える技。
男はこの世界へ降りようとしていた。
零司を封印するために。
あるいは。
討伐するために。
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そして。
転移の光の中で。
男は見てしまった。
零司の背後を。
そこに立つ。
白い装甲の宇宙の帝王めいた巨大な幻影を。
男の顔から血の気が引く。
「……あ」
転移が止まった。
「……」
沈黙。
そして。
男は静かに席へ戻った。
「やっぱり無理です」
即座に着席した。
会議室中から拍手が起こった。




