表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/93

第55話 世界のバグ

黒い柱は夜空を貫いていた。


まるで世界そのものに突き刺さった傷跡のようだった。


その中心で。


巨大な影が蠢いている。


騎士たちは顔面蒼白だった。


呼吸すら苦しい。


見ているだけで頭痛がする。


セリナも額を押さえていた。


「魔力じゃない……」


「こんなの知らない……」


ボルグも盾を握り締める。


歴戦のAランク冒険者。


それでも足が震えていた。


そして。


ガルドは剣を抜いていた。


王国最強。


その男ですら表情は険しい。


「最悪だな」


小さく呟く。


今まで何度も封鎖区域を調査してきた。


だが。


こんな反応は初めてだった。


本能が告げている。


あれは危険だと。


絶対に近付いてはいけないと。



しかし。


零司だけは違った。


「やっぱり」


不思議そうに呟く。


全員が振り返る。


「見たことあります」


少女が頭を抱えた。


「だと思ったよ……」


嫌そうだった。


非常に嫌そうだった。


ガルドも眉をひそめる。


「どこでだ」


「分かりません」


零司は首を傾げる。


「夢だった気がします」


その瞬間。


少女が空を見上げた。


完全に諦めた顔だった。


「やっぱり覚えてるじゃん」


「?」


「いや、何でもない」


絶対に何でもなくなかった。



黒い柱の中から何かが這い出してくる。


人型。


しかし人ではない。


全身が黒い靄で構成されている。


顔もない。


目もない。


口もない。


それなのに。


全員が感じた。


見られている。


と。


騎士の一人が膝をつく。


「うっ……」


吐血。


もう一人も倒れる。


セリナが叫んだ。


「視線を合わせるな!」


しかし遅い。


精神が削られていく。


存在そのものが異常だった。



その時。


黒い影が零司を見た。


正確には。


零司の方へ顔を向けた。


そして。


固まった。


全員が固まる。


影も固まる。


零司も固まる。


何とも言えない空気が流れる。


数秒後。


黒い影が一歩後ろへ下がった。


「……?」


ガルドが目を細める。


影はさらに下がる。


明らかに警戒していた。


まるで。


天敵を見つけた獣のように。



少女は遠い目をしていた。


「あーあ」


「どうしたんです?」


零司が聞く。


「終わった」


少女は即答した。


「何がです?」


「向こうが」


意味が分からない。


しかし次の瞬間。


黒い影が突然叫び始めた。


声はない。


なのに叫んでいると分かる。


空間が歪む。


木々が揺れる。


騎士たちが耳を塞ぐ。


ガルドも顔をしかめる。


そして。


黒い影は。


逃げた。


全力で。


黒い柱の中へ。


物凄い勢いで。


振り返りもせず。


ただひたすら。


逃げた。



沈黙。


誰も喋らない。


何が起きたのか理解できない。


王国最強のガルドが警戒していた存在。


封鎖区域の元凶。


それが。


逃げた。


零司を見た瞬間に。


ガルドがゆっくり零司を見る。


セリナも見る。


ボルグも見る。


騎士たちも見る。


零司だけが困惑していた。


「何だったんでしょう」


本当に分からないらしい。


少女は盛大にため息を吐いた。


「だから言ったじゃん」


「何をです?」


「五十三万さんだって」


零司は首を傾げる。


意味が分からない。


だが。


その数字を聞く度に。


なぜか妙に気分が良くなる。


理由は分からない。


本当に分からない。



すると突然。


少女が吹き出した。


肩を震わせながら笑い始める。


「ふふっ……」


「?」


「だめだ」


「何がです?」


「思い出した」


少女は笑いを堪えながら言う。


「昔の君」


「昔の僕?」


「うん」


少女は真似をするように顎へ手を当てた。


そして。


妙に堂に入った口調で言った。


「参考までにお伝えしておきますが」


零司が固まる。


周囲も固まる。


少女はさらに続ける。


「私の戦闘力は五十三万です」


沈黙。


ガルドが顔を覆う。


セリナが吹き出す。


ボルグが肩を震わせる。


なぜか分からない。


意味も分からない。


だが。


妙に面白かった。


そして零司自身も。


なぜか少しだけ恥ずかしくなった。


「僕……そんなこと言いました?」


「何回も」


少女が即答する。


「それはちょっと嫌ですね」


真顔だった。


少女はついに大笑いした。


「全然変わってないじゃん!」


封鎖区域に初めて笑い声が響く。


だが。


その笑いの裏で。


黒い柱はまだ消えていなかった。


そして柱の奥では。


別の何かが目を覚まそうとしていた。


今度は逃げない。


今度は。


零司を知っている。


そんな予感だけが。


静かに広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ