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『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


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第48話 おれの薬草店のことかぁぁぁー!!

市場はようやく落ち着きを取り戻し始めていた。


Aランク級魔獣出現という大事件があったにもかかわらず、人的被害はゼロ。


建物被害もほぼゼロ。


普通なら奇跡と呼ばれる結果だった。


もっとも、その奇跡を起こした本人は薬草の品定めに夢中だったのだが。


「こちらも品質が良いですね」


「兄ちゃんは本当に薬草が好きだな」


店主が苦笑する。


零司は素直に頷いた。


「薬草は奥が深いですから」


その顔は本当に楽しそうだった。


一方で、市場の反対側ではアルフォンスが歯ぎしりしていた。


服は汚れ、醜態を晒し、多くの人間に見られた。


しかも命を救ったのは零司。


屈辱だった。


認めたくなかった。


だからこそ、彼は最悪の結論に辿り着いた。


「潰せ」


取り巻きたちが顔を上げる。


「アルフォンス様?」


「その薬草店を潰せと言ったんだ」


誰も言葉を返せなかった。


さすがにまずい。


侯爵家でも無理がある。


だがアルフォンスは止まらない。


「税務違反でも営業許可でも何でもいい!」


完全に逆恨みだった。


「俺に恥をかかせた代償を払わせてやる!」


その言葉を。


運悪く。


市場の商人たちが聞いてしまった。


そして。


さらに運悪く。


観測者の一人も聞いてしまった。


「まずい」


即座に判断する。


これはまずい。


非常にまずい。


報告しようとしたその時だった。


店の前で荷物を整理していた店主が聞いてしまった。


顔が青くなる。


長年続けてきた店だ。


生活の全てだ。


失えば終わる。


老人の肩が震えた。


その様子を見て。


零司が気付いた。


「どうしました?」


「……いや」


店主は笑おうとする。


だが笑えない。


隠しきれない。


零司は視線を向ける。


アルフォンスたちがいる。


聞こえてくる。


店を潰す。


営業停止。


閉店。


そんな単語。


数秒。


本当に数秒だった。


零司は静かに考える。


そして。


理解した。


この店がなくなる。


王都で最も品質の良い薬草店が。


自分が通い続けた店が。


なくなる。


その瞬間だった。


ビキッ。


市場全体に亀裂のような音が響いた。


誰も原因が分からない。


だが観測者たちは見た。


零司の足元。


石畳が砕けている。


無意識。


完全な無意識だ。


「まずい」


観測者の一人が呟く。


「過去最高だ」


全員同意だった。


今までで一番まずい。


Aランク魔獣が出た時より。


ベヒモスより。


ワイバーンより。


遥かに。


まずい。


零司はゆっくりと顔を上げた。


アルフォンスを見る。


その瞬間。


アルフォンスの背筋に悪寒が走った。


本能だった。


逃げろ。


そう叫んでいる。


だが足が動かない。


零司は一歩前へ出た。


また石畳が砕ける。


市場が静まり返る。


誰も喋らない。


誰も動かない。


そして。


零司は叫んだ。


「お、おれの薬草店のことかぁぁぁーーー!!」


市場に響く大絶叫。


その瞬間。


空気が震えた。


窓ガラスが割れる。


看板が吹き飛ぶ。


商人たちが耳を押さえる。


観測者たちは顔を覆った。


終わった。


そう思った。


だが。


叫んだ本人が首を傾げる。


「……あれ?」


沈黙。


「何か違いますね」


市場中が固まった。


本人も固まった。


アルフォンスも固まった。


何だ今のは。


零司は腕を組む。


真剣に悩む。


「もっとこう……怒りが爆発する感じだった気が」


どこで覚えたのか。


本人にも分からない。


だが何か違った。


しかし。


怒りそのものは消えていない。


むしろ増していた。


零司は静かにアルフォンスを見る。


その視線だけで侯爵家嫡男の顔色が真っ白になる。


「店を潰すんですか?」


穏やかな声。


なのに恐ろしい。


「え……あ……」


言葉が出ない。


零司はさらに一歩近付く。


「なぜですか?」


アルフォンスは後退る。


「そ、それは……」


「良い店ですよ?」


本当に不思議そうだった。


だから怖い。


観測者たちは悟る。


零司は薬草よりも。


薬草を大切にする人間を高く評価している。


つまり。


この店主への攻撃は。


薬草そのものへの攻撃と同じだ。


そして。


その時だった。


市場の屋根の上。


あのAランク魔獣が姿を現した。


「グルルルル……」


低い唸り声。


黄金の瞳はアルフォンスを見ている。


完全に敵認定だった。


観測者たちは思う。


どちらが危険だろうか。


Aランク魔獣か。


黒崎零司か。


結論は出なかった。


ただ一つ分かったのは。


アルフォンスの地獄は。


まだ始まったばかりだということだった。

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