表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/30

第3話 山を消した男

「化け物だぁぁぁぁぁっ!!」


アルト王国北部。


街道沿いにある小さな町、リーデル。


その冒険者ギルドの扉が勢いよく開いた。


昼過ぎの静かな時間帯だった。


依頼帰りの冒険者たちが酒を飲み、受付嬢たちが書類整理をしている。


いつも通りの光景。


だったはずだ。


「た、大変だ!」


飛び込んできた男は息を切らしていた。


革鎧は泥だらけ。


顔は真っ青。


まるで魔物に追われてきたような様子だった。


「あれ?」


受付嬢のミリアは首を傾げる。


「ロイドさん?」


飛び込んできたのはDランク冒険者のロイドだった。


それなりに経験を積んだベテラン。


ゴブリンごときで慌てるような男ではない。


だからこそ異常だった。


「ギルドマスターは!?」


「え?」


「早く呼べ!」


「な、何があったんですか?」


ロイドは叫んだ。


「山を消した化け物がいる!!」


ギルド内が静まり返る。


またか。


全員が同じことを思った。


今日だけで何回目だろう。


北方監視塔から届いた緊急報告。


山の消失。


盗賊団の消滅。


原因不明の巨大破壊。


その件で朝から大騒ぎだったのだ。


「落ち着いてください」


ミリアが言う。


「まずは話を――」


「話してる場合か!」


ロイドは机を叩いた。


「俺は見たんだ!」


「何をです?」


「犯人をだ!」


ざわり。


空気が変わる。


近くの冒険者たちも耳を傾け始めた。


「本当なのか?」


「見たのか?」


「魔王軍か?」


質問が飛び交う。


ロイドは首を振った。


そして震える声で言った。


「若い男だった」


「男?」


「一人だった」


「一人で山を消したのか?」


「知らねぇよ!」


ロイドは半泣きだった。


「俺だって意味が分からねぇんだ!」


その時。


奥の部屋の扉が開いた。


ギルドマスターのバルドが姿を現す。


大柄な男だった。


歴戦の冒険者らしい威圧感がある。


「騒がしいな」


「ギルドマスター!」


ロイドは駆け寄った。


「見たんです!」


「何をだ」


「山を消した奴を!」


バルドの目が細くなる。


「詳しく話せ」


ロイドは唾を飲み込んだ。


そして語り始める。


◇◇◇


「最初は普通の若者だった」


ロイドは言う。


「黒髪で、武器も持ってなかった」


「魔法使いか?」


「違う」


「じゃあ戦士か?」


「違う」


「冒険者か?」


「それも違う気がする」


バルドは眉をひそめた。


話が曖昧だ。


だがロイドの様子を見る限り嘘ではない。


「それで?」


「そいつの後ろに消えた山が見えた」


「……ほう」


「だから聞こうと思ったんだ」


何が起きたのか。


知っているのか。


そう聞くつもりだった。


しかし。


「そいつが挨拶したんだ」


「挨拶?」


「こんにちは、って」


ギルド内に沈黙が落ちる。


ロイドは真顔だった。


「こんにちは?」


「こんにちはだ」


「普通だな」


「普通なんだよ!」


ロイドは叫んだ。


「だから怖いんだろうが!」


誰も反論できなかった。


山を消した犯人かもしれない男が。


爽やかに挨拶してくる。


確かに怖い。


「それで?」


「俺は後ろの山を見た」


「うむ」


「男を見た」


「うむ」


「指を見た」


「指?」


ロイドは大きく頷いた。


「そしたら分かった」


「何がだ」


「逃げなきゃ死ぬって」


「根拠は?」


「勘だ」


バルドは頭を抱えた。


だがロイドは真剣だった。


冒険者の勘。


それは案外馬鹿にできない。


死線を潜ってきた人間の直感は時に理屈を超える。


「で?」


「逃げた」


「逃げたのか」


「全力で」


ギルド内から笑いが漏れた。


ロイドはDランクの実力者だ。


そんな男が戦わずに逃げた。


普通なら笑い話だろう。


しかし。


「笑うな」


ロイドは低い声で言った。


笑い声が止まる。


「俺はな」


額に汗を浮かべながら続ける。


「あいつが本気を出したら、この町ごと消える気がした」


誰も笑わなかった。


その表情が本気だったからだ。


◇◇◇


同じ頃。


張本人は森を歩いていた。


「町とかないんですかね」


霧島零司は困っていた。


とても困っていた。


異世界に来た。


能力も手に入れた。


だが。


行き先がない。


地図もない。


食料もない。


知識もない。


「まず宿ですね」


現実的な問題だった。


デスビームで山は消せる。


しかし宿は作れない。


「能力の配分がおかしい気がします」


歩きながら独り言を呟く。


すると。


ぐぅぅぅぅ。


腹が鳴った。


お腹が空いた。


当然だった。


朝から何も食べていない。


「まずは食事ですか」


その時。


前方に煙が見えた。


誰かがいる。


町かもしれない。


零司の顔が少し明るくなる。


「助かりました」


彼は知らない。


その頃ギルドでは。


『山を消した化け物』


『人の姿をした災厄』


『指先で世界を削る男』


など。


勝手な噂が広まり始めていることを。


そして。


その全てが自分のことだとも知らなかった。


「できれば優しい人だといいのですが」


そう呟きながら。


後に《終焉の指》と呼ばれる男は、のんびりと町へ向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ