表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/30

第23話 降参は大切だと思います

零司の指先に黒い光が集まる。


たったそれだけの光だった。


大きくもない。


派手でもない。


むしろ地味ですらある。


しかし。


グラッドには分かった。


あれは駄目だ。


絶対に受けてはいけない。


冒険者として培った経験。


何度も死線を潜り抜けてきた勘。


その全てが警告していた。


あれは人間が相手にしていい力ではない、と。


「待て」


気付けば口にしていた。


零司が首を傾げる。


「はい?」


「その技は使うな」


宿の裏庭が静まり返る。


見物人たちは意味が分からない。


グラッドほどの実力者が、戦う前から相手を止めているのだ。


しかも声が少し震えている。


「なぜです?」


零司は純粋に疑問だった。


グラッドは額の汗を拭う。


「嫌な予感がする」


正直な感想だった。


周囲から笑い声が漏れる。


だが護衛騎士たちと王都の使者たちは笑えなかった。


彼らは知っている。


嫌な予感では済まない可能性があることを。


「安心してください」


零司は穏やかに言った。


「かなり弱めます」


使者たちの顔色が変わる。


嫌な言葉だった。


とても嫌な言葉だった。


山を消した男の「かなり弱める」は信用できない。


「どのくらいだ?」


グラッドが聞く。


零司は少し考えた。


「一割くらいでしょうか」


グラッドは頷く。


一割なら大丈夫だろう。


使者たちは頷かなかった。


まったく大丈夫な気がしなかった。



「……やはり一度見ておくべきか」


グラッドは覚悟を決めた。


逃げるような真似はしたくない。


少なくとも何が起きるのか確認する。


それが冒険者としての意地だった。


「では」


零司は指先を空へ向ける。


「デスビーム」


黒い光が放たれた。


その瞬間だった。


夜空が裂けた。


誰もがそう錯覚した。


一直線に伸びた黒い光は雲を貫き、遥か上空へ消えていく。


数秒遅れて衝撃波がやってきた。


ゴォォォォォォッ!!


宿の窓が激しく震える。


木々が揺れる。


馬が悲鳴を上げる。


見物人たちは慌てて身を伏せた。


だが被害はない。


零司は上空へ向けて撃ったのだ。


しかし。


それでも十分すぎた。


誰も言葉を発せない。


ただ夜空を見上げる。


雲が消えていた。


綺麗に。


まるで最初から存在しなかったかのように。


満天の星空が広がっている。



「これで大丈夫でしょうか」


零司が聞く。


グラッドは答えられなかった。


大丈夫なわけがない。


何だ今の。


飛竜を斬った時より驚いている。


というか比較対象にならない。


世界が違う。


根本から。



グラッドの脳裏に先ほどの幻覚が蘇る。


黄金の玉座。


小柄な支配者。


退屈そうな目。


そして圧倒的な存在感。


あれは幻覚だ。


そうに違いない。


だが。


もし違うとしたら。


もしあれが、自分の本能が見せた警告だったとしたら。



「……無理だな」


グラッドは呟いた。



そして。


大剣を地面に置いた。



ガシャン。



静かな音が響く。



次の瞬間。


グラッドは膝をついた。



「降参だ」



宿の裏庭が凍り付く。


誰も理解できなかった。


竜殺しグラッド。


Bランク冒険者。


この地方では英雄と呼ばれる男。


その男が。


一撃も交えず降伏したのだ。



「え?」


零司が困惑する。


「戦わないんですか?」


「戦えるか」


即答だった。



「いや、戦えないだろうが!」


と、護衛騎士の一人が思わず叫ぶ。


周囲も激しく同意した。



グラッドは立ち上がる。


悔しそうな顔はしていなかった。


むしろ清々しい。


長年の経験があるからこそ分かる。


勝てない相手というものは存在する。


それだけだ。



「零司」


初めて呼び捨てにした。


だがそこに敵意はない。


実力者への敬意だった。



「何でしょう」



「王都には俺より強い奴もいる」



見物人たちが頷く。


それは事実だ。


Aランク冒険者。


騎士団長。


宮廷魔導師。


化け物は存在する。



しかし。


グラッドは苦笑した。



「いや、違うな」



零司を見る。



「たぶん、お前の方が強い」



零司は首を傾げた。


よく分からない。


だが悪意は感じなかった。



「ありがとうございます?」



なぜ疑問形なのか。


誰も分からない。



その時だった。


宿の入口から一人の男が飛び込んできた。


息を切らしている。


顔色も悪い。



「た、大変だ!」



全員が振り返る。



「町の北門に魔物の群れが現れた!」



空気が一変した。



「数は!?」


グラッドが叫ぶ。



男は青ざめながら答える。



「百……いや、二百はいる!」



宿の裏庭が騒然となる。



グラッドの顔が険しくなった。


二百体規模。


小さな町なら滅びかねない数だ。



だが。


零司だけは首を傾げていた。



「二百ですか」



少し考える。



そして穏やかに言った。



「多いですね」



周囲は思った。



そこじゃない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ