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『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


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第18話 それは感心しませんね

「なんだお前?」


盗賊の頭領は下品な笑みを浮かべた。


肩には大斧。


顔には古傷。


見るからに荒くれ者だ。


その背後には三十人以上の盗賊たち。


全員が武器を構え、馬車を取り囲んでいる。


普通の護衛隊ならとっくに絶望している状況だった。


だが零司は違った。


ゆっくりと周囲を見渡す。


盗賊。


盗賊。


盗賊。


そして怯える商人たち。


泣きそうな女性。


震える子供。


状況は大体理解できた。


「なるほど」


零司は頷く。


「何がなるほどだ」


頭領が笑う。


「命乞いなら聞いてやるぞ?」


周囲の盗賊たちもゲラゲラと笑った。


しかし零司は真面目な顔のままだった。


「一つ聞いてもいいですか?」


「あ?」


「女性を連れて行くと言いましたよね」


頭領がニヤリと笑う。


「言ったな」


「そうですか」


「いい女は高く売れるからな!」


盗賊たちが再び笑う。


下卑た笑いだった。


その瞬間。


零司の表情から笑みが消えた。


ほんの少しだけ。


だが、その変化を見た者はいた。


馬車の窓から様子を見ていた使者たちである。


思わず顔を見合わせる。


何だろう。


急に空気が変わった気がした。


零司は静かに言った。


「それは感心しませんね」


頭領が眉をひそめる。


「何だと?」


「人を物のように扱うのは良くないと思います」


「説教か?」


「はい」


真面目に答えた。


盗賊たちは一瞬呆気に取られた後、大爆笑した。


「聞いたか!?」


「説教だってよ!」


「面白ぇ!」


誰も零司を脅威と思っていない。


ただの若造だと思っている。


だから笑えた。


頭領も肩を震わせながら笑う。


「おい坊主」


大斧を肩に担ぐ。


「一つ教えてやる」


そして笑顔のまま言った。


「世の中は強い奴が正しいんだよ」


盗賊たちが歓声を上げる。


頭領は満足そうだった。


決まったと思ったのだろう。


だが零司は首を傾げた。


「そうなんですか?」


「ああ」


「なるほど」


納得したように頷く。


そして。


続けた。


「では私が正しいですね」


空気が止まった。


頭領の笑みが引きつる。


「……何?」


零司は穏やかに説明した。


「私の方が強いので」


沈黙。


次の瞬間。


盗賊たちが腹を抱えて笑い始めた。


「聞いたか!?」


「俺たちより強いらしいぞ!」


「傑作だ!」


頭領も大笑いしている。


しかし。


馬車の中では誰も笑っていなかった。


使者たちも。


商人たちも。


護衛騎士たちも。


みんな知っている。


この青年は冗談を言っていない。


本気で言っている。


そして本気でその通りなのだ。


「もういい」


頭領が大斧を構えた。


「殺せ」


盗賊たちが一斉に動く。


十人以上が零司へ向かって走り出した。


剣。


槍。


斧。


棍棒。


殺気と共に迫る。


普通なら逃げ出す光景だった。


零司は小さくため息を吐く。


「困りましたね」


そして右手を上げた。


人差し指を向ける。


それだけ。


本当にそれだけだった。


黒い光が走る。


一瞬。


ただの一瞬だった。


ドォォォォォン!!


轟音が山道を揺らした。


突撃していた盗賊たちの前方。


地面が一直線に抉り飛ぶ。


まるで巨大な竜が通ったような溝が生まれていた。


幅二メートル。


深さ四メートル。


距離は数百メートル以上。


遥か彼方の森まで一直線だった。


静寂。


誰も動かない。


誰も喋らない。


盗賊たちも。


護衛騎士たちも。


使者たちも。


全員がその光景を見ていた。


零司は指を下ろす。


そして不思議そうに首を傾げた。


「どうしました?」


どうしましたじゃない。


全員がそう思った。


頭領の手から大斧が落ちる。


ガラン、と乾いた音が響いた。


顔面蒼白だった。


先ほどまでの余裕はどこにもない。


「ば……」


声が震える。


「化け物……」


零司は少し傷付いた。


「酷いですね」


本気でそう思った。


すると頭領が後退る。


一歩。


また一歩。


完全に腰が引けていた。


零司は穏やかに微笑む。


「今のは少し危なかったですよ」


その言葉で。


盗賊たちは一斉に後ろへ飛び退いた。


まるで猛獣を見たかのように。


「ひっ……!」


悲鳴まで上がる。


零司は理解できなかった。


警告しただけなのに。


なぜそんなに怯えるのだろう。


その時だった。


頭領が叫ぶ。


「逃げろぉぉぉ!!」


統率も何もない。


三十人以上の盗賊たちが一斉に背を向けた。


完全崩壊だった。


数秒前まで威勢よく笑っていた集団とは思えない。


零司はその背中を見送りながら小さく呟く。


「話し合いで解決しましたね」


馬車の中。


使者たちは頭を抱えた。


護衛騎士たちは天を仰いだ。


商人たちは涙を流して喜んでいる。


誰一人として。


今の出来事を「話し合い」とは思っていなかった。


ただ一人を除いて。

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