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『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


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第17話 王都へ

王都へ向かう馬車は、街道を順調に進んでいた。


出発して半日。


窓の外には広い草原が続いている。


空は青く、風も穏やかだった。


旅としては快適な部類だろう。


もっとも。


馬車の中の空気はあまり快適ではなかった。


向かいの席に座る王都の使者二人が、露骨に零司を値踏みしていたからだ。


「……」


「……」


視線が痛い。


零司は薬草図鑑を読みながら思った。


何か付いているのだろうか。


少し気になったので聞いてみる。


「どうかしましたか?」


使者の一人が鼻を鳴らした。


「別に」


「そうですか」


会話終了。


零司は再び本へ視線を落とした。


使者たちは顔をしかめる。


普通なら居心地が悪くなるはずだ。


だが零司は本当に気にしていない。


むしろ薬草図鑑の方が重要らしい。


「おい」


年上の使者が小声で言った。


「本当にこいつか?」


「分かりません」


もう一人も声を潜める。


「どう見ても普通の青年ですが」


「だろうな」


山を消した。


盗賊団を壊滅させた。


そんな噂を聞いて来たのだ。


もっとこう。


威圧感のある人物を想像していた。


ところが現実はどうだ。


地味な革鎧。


薬草図鑑。


穏やかな顔。


英雄というより薬師見習いである。


「なあ」


零司へ声を掛ける。


「何でしょう」


「本当に盗賊団を倒したのか?」


零司は少し考えた。


「倒したというより、降参していただきました」


「百人以上がか?」


「そうですね」


「どうやって」


「デスビームで」


「……」


「……」


会話終了。


使者たちは頭を抱えた。


何も分からない。


むしろ謎が増えた。


そんなやり取りをしているうちに、馬車は山道へ入っていく。


街道は狭くなり、左右には木々が増えていた。


護衛騎士たちも少し警戒を強めている。


商人たちも静かになった。


こういう場所は襲われやすい。


誰もが知っていることだった。


そして。


嫌な予感は大抵当たる。


突然。


馬車が激しく揺れた。


ガタンッ!


悲鳴が上がる。


荷物が倒れる。


零司も本から顔を上げた。


外から怒号が聞こえる。


「止まれ!」


「全員馬車から出ろ!」


「抵抗するなよ!」


馬車内の空気が一瞬で凍り付いた。


商人の顔が青くなる。


子供が泣き出した。


護衛騎士が窓の外を確認し、顔色を変える。


「賊です!」


その言葉で騒ぎはさらに大きくなった。


「何人だ!」


使者が叫ぶ。


「三十人以上!」


多い。


護衛騎士は十名程度。


単純計算でも勝ち目は薄かった。


使者たちの表情から余裕が消える。


先ほどまで零司を見下していた男たちも、さすがに現実を理解したらしい。


外では盗賊たちの笑い声が響いている。


「大当たりだ!」


「王都の馬車じゃねぇか!」


「金持ちが山ほどいるぞ!」


下品な笑い声だった。


商人たちが震える。


誰もが最悪の未来を想像していた。


その時。


盗賊の頭らしき男の声が響く。


「女は連れて行け!」


「若いのから選べ!」


馬車内の女性たちが悲鳴を上げた。


零司はゆっくりと顔を上げる。


さすがに少し気になった。


「なるほど」


静かな声だった。


使者たちが振り返る。


零司は本を閉じて立ち上がる。


「どうするつもりだ」


使者が聞いた。


零司は首を傾げた。


「どうするとは?」


「外には盗賊がいる!」


「そうですね」


「三十人以上だぞ!」


「数えたんですか?」


「そんな話じゃない!」


使者は思わず叫んだ。


余裕がない。


零司は窓の外をちらりと見る。


確かに盗賊は多い。


だが。


問題は人数ではなかった。


「女性を連れて行くのは良くないですね」


ぽつりと呟く。


その声は穏やかだった。


しかし。


なぜか使者たちの背筋に冷たいものが走る。


嫌な予感。


非常に嫌な予感。


零司はゆっくりと馬車の扉へ向かった。


「どこへ行く!」


「外です」


「正気か!?」


「大丈夫ですよ」


零司は振り返る。


そして。


穏やかに微笑んだ。


「私は温厚なんですが」


使者たちは顔を見合わせた。


意味が分からない。


だが。


何となく分かった。


外の盗賊たちが終わったことだけは。


馬車の扉が開く。


山道に風が吹き抜けた。


盗賊たちの視線が一斉に集まる。


そして頭領が笑う。


「なんだお前?」


零司はゆっくりと前へ出た。


右手を上げる。


人差し指が真っ直ぐ向く。


盗賊たちはまだ笑っていた。


次の瞬間、自分たちが何を見ることになるのかも知らずに。

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