表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺だけデスビーム』 ~剣も魔法もいらないので世界最強です~  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/28

第12話 これが貴族の戦いだ

朝。


レグナード男爵家の私兵団が東門前に集結していた。


磨き上げられた鎧。


立派な軍馬。


風にはためく家紋入りの旗。


町の住民たちも集まり、その様子を遠巻きに見ている。


確かに見栄えは良かった。


それだけなら。


「ふふん」


カイル・フォン・レグナードは満足そうに頷く。


「見ろ」


隣の騎士へ言う。


「これが貴族だ」


騎士は慣れた様子で頷いた。


おそらく毎回言っている。


◇◇◇


そんな中。


最後尾には一人だけ場違いな人物がいた。


霧島零司である。


革鎧。


荷物袋。


初心者冒険者。


どう見ても新人だった。


「なぜ歩きなんですか?」


零司が尋ねる。


護衛騎士が鼻で笑った。


「当然だ」


「?」


「平民に馬は勿体ない」


なるほど。


そういうものなのか。


零司は納得した。


前世でも馬に乗ったことはない。


特に不満はなかった。


◇◇◇


しかし。


周囲の冒険者たちは不満そうだった。


ガンズ。


レオルド。


そして数名の討伐参加者。


全員が険しい顔をしている。


「気にするな」


ガンズが小声で言う。


「別に気にしてません」


零司は本当に気にしていなかった。


ガンズは少し笑う。


この男の良いところでもあり悪いところでもある。


◇◇◇


出発から二時間。


街道を進み続ける。


先頭ではカイルが演説していた。


誰も聞いていない。


だが本人は気付かない。


「盗賊など敵ではない」


堂々と言う。


「所詮はならず者の集団だ」


騎士たちが頷く。


「我ら貴族の軍勢が負けるはずもない」


さらに頷く。


士気だけは高かった。


◇◇◇


そして。


カイルは不意に振り返った。


視線の先には零司。


「魔力3」


名前では呼ばない。


魔力3である。


「何でしょう」


「よく見ておけ」


胸を張る。


「これが本物の強さだ」


零司は素直に頷いた。


「勉強になります」


「そうだろう」


満足そうだった。


ガンズは頭を抱えた。


◇◇◇


昼頃。


森へ到着する。


報告通りだった。


木造の砦。


見張り台。


武装した男たち。


盗賊団である。


「いました!」


騎士が叫ぶ。


カイルが笑った。


「見つけたぞ!」


勝利を確信した声だった。


◇◇◇


「包囲しろ!」


命令が飛ぶ。


騎士たちが動く。


森を回り込み砦を囲む。


見事な連携だった。


少なくとも見た目は。


盗賊たちは慌てているように見える。


逃げ出す者までいた。


「見たか」


カイルが零司へ言う。


「敵は恐れている」


「そうなんですか」


「当然だ」


自信満々だった。


◇◇◇


その時。


零司は少し違和感を覚えた。


森が静かすぎる。


砦の規模に対して人が少ない。


逃げる盗賊も妙だ。


本当に逃げているようには見えない。


「カイルさん」


「何だ」


「少し変では?」


カイルが笑う。


「何がだ」


「盗賊が少ない気が」


「素人が口を出すな」


即答だった。


零司は黙る。


勉強中なので。


◇◇◇


「突撃!」


カイルが剣を抜く。


騎士たちが前進する。


その瞬間だった。


ヒュンッ!


空気を裂く音。


一本の矢が飛ぶ。


騎士の肩へ突き刺さった。


「ぐあっ!」


悲鳴。


続いて。


ヒュン!


ヒュン!


ヒュン!


ヒュン!


森の四方八方から矢が飛来した。


◇◇◇


「なっ!?」


カイルが固まる。


次々と騎士が落馬する。


悲鳴。


怒号。


混乱。


先ほどまでの余裕は消し飛んでいた。


「伏せろ!」


副官が叫ぶ。


しかし遅い。


完全な奇襲だった。


◇◇◇


そして。


森の奥から男たちが現れる。


一人。


二人。


十人。


二十人。


五十人。


さらに増える。


まだ増える。


あっという間に百人近い武装集団が姿を現した。


騎士たちの顔色が変わる。


「百人……」


「そんな馬鹿な……」


報告では五十人。


倍だった。


完全に情報が間違っている。


◇◇◇


その中央。


巨大な男が現れた。


二メートルを超える大男。


巨大な斧。


顔の傷。


盗賊団頭領グラド。


男は笑った。


「ようこそ」


低い声が響く。


「貴族様」


周囲の盗賊たちも笑う。


完全に獲物を見る目だった。


◇◇◇


カイルは剣を握る。


しかし手が震えていた。


「罠だと……」


「その通りだ」


グラドが笑う。


「砦は囮だ」


周囲から盗賊が現れる。


包囲。


完全包囲。


逃げ場はない。


◇◇◇


「さて」


グラドは斧を肩に担いだ。


「身代金はいくらになるかな」


盗賊たちが大笑いする。


騎士たちは青ざめる。


士気は崩壊寸前だった。


◇◇◇


そんな中。


零司だけが周囲を見回していた。


そして。


小さく呟く。


「おやおや」


聞き覚えのある言葉。


ガンズが顔を引きつらせる。


レオルドも同じだった。


知っている。


この言葉が出た時の零司を。


◇◇◇


グラドが零司を見る。


新人冒険者にしか見えない。


革鎧。


安物の装備。


平凡な顔。


脅威には見えなかった。


「なんだ坊主」


笑いながら言う。


「震えて声も出ねぇか?」


零司は首を横に振った。


そして本当に困ったような顔で言った。


「いえ」


「?」


「今のは少し危なかったですよ」


グラドが眉をひそめる。


意味が分からない。


しかし。


ガンズたちは理解していた。


そして全員が同じことを思う。


――終わった。


その瞬間。


東街道に吹く風だけが静かに木々を揺らしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ